春色のletter
「どうぞ」
「はい、おじゃましま~す」
私はいつもの場所にバッグを置くと、淳さんにソファを勧めて珈琲を淹れる準備にかかった。
ちらっと見ると、彼女は座らずにソファの後ろの本棚を見ていた。
作り付けの本棚に私のお気に入りの本が並んでいる。
私は2人分の珈琲豆を熱が加わらないようにゆっくりと挽いていた。
「あ、これ!」
その声に振り返ると、彼女はハルのイラスト集を手にしていた。
「どうしたの?」
「これ、ハルさんのイラスト集ですね!」
私は豆を挽く手を止めた。
「淳さん、ハルを知ってるの?」
「ええ、前に下北沢でお会いしました」
驚いた。
こんな近くに、彼を知っている人がいた。
私は動揺を隠しながら、また豆を挽き始めた。