春色のletter
「夜梨ちゃん」


「…はい」


「美沙ね、生まれつき心臓が悪いの」


私は視線を彼女に向けた。


「ちょっと奇形があってね、あまり運動ができなかったんだ」


その時初めて、あの落ち着いた雰囲気だと思っていた歩き方が、そのせいだと気が付いた。


(バカだ…私)


「まだ小さいうちは、何とかなったの。でも、大きくなるにつれて心臓としてのキャパシティが足りなくなる。小さいうちは手術も危険。そのジレンマがあったけど、こうなることは予想できてたの」


(そっか、それで佐伯さん…)


「移植をするか、大きくなるのを待って手術するか…どちらかだったけど、発作が起きた……もう移植は間に合わなかったの。この危険な手術が成功するのを祈るしかないわ」


彼女がさっきとは違い、気丈に話している横で、佐伯さんはうつむいていた。
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