春色のletter
ふと、佐伯さんが私を連れてきた理由がわかった。
『これが最後』だからじゃない。
きっと、沙也さんが、私がいると気丈になれるからだ。
「大丈夫ですよ。あんなかわいい娘を神様はまだ連れて行きませんよ」
私は、さも当たり前のように言った。
「…うん。そうだよね」
「そうですよ」
私は沙也さんの右手に左手を伸ばして重ねた。
彼女はその上に左手を乗せて、口元に力を入れると微笑んだ。
それから、いつ終わるとも知れない手術の終了を私たちは無言で待ち続けた。