春色のletter

「え?」


私はゆっくり振り返ると、彼女はお澄まし顔でまた雑誌に視線を落としたが…


「ぶっ!…あ、はっはっはははは!!」


とうとう吹きだしてしまった。


「あ、もしかして……ずっと、見てた?」


彼女は口を押さえたまま大きく首を縦に振っていた。


私は、彼女に背を向けると、力なく手を挙げて部屋へ向かった。


鍵を開けてドアを閉めても、かおりさんの吹き出し笑いが聞こえていた。


「どうせ、不器用ですよ~」


口ではそう言ったが、春色の手紙を見て、私は笑顔だった。


バッグも置かずにソファにどかっと座ると、その手紙を明かりにかざした。


透ける訳じゃないけど、その中が暖かく見えた気がした。


レターオープナーで丁寧に開けて、3枚の便せんを取り出した。
< 394 / 487 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop