春色のletter
オフィスに戻ると、佐伯さんが首を振った。


どうやら、電話を架けてくれていたらしい。


「とりあえず、私も一度は架けておきます」


すぐに架けてみたが、やはり「社長は出掛けています」と、取り合ってくれなかった。



私は、今度二部上場することになった諏訪山ワインのCI(コーポレーションアイデンティティ)のトータルデザインを任されていた。


諏訪山ワインは、今の社長が自ら起業し、二部とはいえ、一人で上場できるまで大きくした会社だった。


だから娘さんの言った社長の気持ちは良くわかった。


(誠意を見せるしかない…)


私は手紙のコトに気を取られていた気持ちを引き締めた。
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