春色のletter
「そうなんですか」


「でも、表情を変えませんでした」


彼女の言いたいことはわかった。


「わかりました。また作り直して来ます」


頭を下げた私に彼女は言葉を続けた。


「あの…良かったら、一度、うちの勝沼工場を訪ねてみてください」


「え?」


「デザインの参考になると思いますので」


「わかりました」


「工場長は本田といいます。話をしておきますね」


「諏訪山さん、ありがとうございます」


私は深々と頭を下げた。


「実久でいいですよ。まあ、私はあなたのデザインとそのコンセプトが好きだったんで。父はそういうとこは古いのかも」


そう言って、彼女は笑った。
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