春色のletter
中に入ると、全体にワイン色を基調としている部屋だった。


手前に応接セットがあり、奥に大きなデスクがあった。


そのデスクに座っていた初老の男性が、すっと立ち上がってこちらへ歩いてきた。


本田さんより少し若いように見えたが、実際そのはず。


「アトランティックデザインの竹村です」


「社長の諏訪山です。どうぞ」


彼は応接を示したが、私は立ったままだった。


諏訪山社長は「ん?」という顔をした。


「この度は大変失礼な事をしてしまったにもかかわらず、お会いいただきありがとうございます。その節は本当に申し訳ありませんでした」


私は深々と頭を下げた。
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