春色のletter
途中で振り返ると、段々と街並みが見えてきた。


「すごいな~」


彼は毎日、この階段を自転車を担いで上っていた。


(そうそう。押すのはやっぱり無理ってことね)


やっとのことで、坂の上に上った。


一安心もつかの間、もうちょっと次の坂を上らなければならない。

私はとりあえず、もう一度振り返った。

目の前に洞海湾が見える。

その前にちょっと有り得ないモノが見えた。

スペースシャトルが今にも打ち上げられそうに立っている。

宇宙をテーマにした地元のテーマパークの売りの一つだ。

一度、民事再生法適用とかのニュースを見た気がするけど。


「変なの…」


ここからの景色は少し尾道に似てる気がした。

ハルと一緒に行ってみたかった街の一つ…



「さて…」

ひとしきり景色を堪能した私はまた坂の方に足を向けた。

目の前の小さな坂はしばらくして左に曲がる。


そこを曲がると、右手にハルの実家が見えてきた。


道路沿いに車庫があって、階段を上って玄関のある2階建ての家。


記憶の中の家がよみがえってきた。


どこも変わっていなかった。
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