春色のletter
「あの、おじさんとおばさんは?」
「ああ、ちょうど温泉旅行に行っちゃったのよね」
「お二人は知らないですかね?」
「うん、私が知らないなら、多分…」
「そっか」
まるで世間知らずの、ぽやんとした感じのお二人の笑顔を思い出した。
この家のことを仕切ってきたのは、さつきさんだ。
「えっと、最近何か変わったことは?」
「変わったこと?…と言えば、私が離婚してここに帰ってきてること?」
「あ、そうなんですか?」
「うん」
さつきさんが苦笑しながらうなずいた。
「まあ、もう1年だから、そう最近でもないか」
「さつきさんは、今も先生を?」
「うん。今は八幡東中学よ」
「あ、ハルの母校じゃないですか」
「私の母校でもあるんだけど」
彼女は笑った。
「あ、そっか」
私は頭をかいた。