春色のletter
「でも、ごめん。ほんと役立ちそうな情報は…」
「あ、携帯の電話番号とかは?」
「あ、そうよね。ちょっと待って」
さつきさんは台所の方へ携帯を取りに行った。
部屋を見回すと、縁側の日だまりに猫が1匹寝ていて、しっぽをゆっくり振っていた。
「にゃあ~」
声をかけると、ちょっと「なんだ?」という感じで顔をこっちへ向けたが、あまり興味ないようで、また寝転んだ。
「あったあった」
携帯の画面を見ながら、さつきさんが戻ってきた。
「じゃあ、今架けちゃおうか?」
「あ…そうですね」
私は多分繋がらないだろうとは思ったが、そう言った。
さつきさんはしばらく携帯に耳を充てていた。
「なんか、電波の繋がらないところか電源が…って言ってる」
「やっぱり…」
その反応に、さつきさんがきょとんとした。
「夜梨子ちゃん、何か知ってるの?」
「ええ、まあ」
私は、知っている範囲のことを手短に話した。