春色のletter
その夜、寝ようと部屋に戻ると、ドアがノックされた。
「夜梨子」
「はい」
私が返事をすると母がドアをそっと開けた。
「どうしたの?」
母は少し躊躇していたが、
「合格おめでとう」
と、少し小さめの声で言った。
「あ、ありがとう」
「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
母はそれだけ言うとそっとドアを閉めた。
そう言えば、合格を伝えた時も、「そう、良かったわね」とだけ言われて、まだはっきりとお祝いを言ってもらってなかった。
私は閉まったドアに向かって、もう一度、
「おやすみなさい」
とつぶやいた。