HARUKA~恋~
「アオハルぅ、花火大会の約束取り付けてやったぜ!感謝しろよな~」
「何それ?!聞いてないよ」
「遥奏が昨日オレのこと面会ルームに入れてくれたんだよ。家族がいねえのを見計らってこっそりな。アイツさ、自分から引き金引いておきながら、アオハルのこと野放しにしてっからさ、言ってやったんだよ!花火大会までに治せって。
そしたら、もちろんそのつもりだって言ってたぞ。…アオハル、お前の夏はこれからだ!」
やっぱり、
やっぱり、
あの夜は…
幻じゃない。
私は、意を決して静かに口を開いた。
「あのさ…、林間学校で何があったの?私…覚えて無いっていうか、夢とか幻のような気がして、実感が沸いてないの」
「アオハル、それマジ?マジで覚えて無い?」
私は首を力無く縦に揺らした。
宙太くんは「参ったなあ…」と言って頭をかきながら、キョロキョロ辺りを見回す。
「アオハル、申し訳無いが、俺の口からは言えない。遥奏に直接聞いてくれ。
ただ、俺が確かに言えることは…」
顔をあげた私の視線と宙太くんの視線がぶつかった。
私は、目を伏せることはしなかった。
ちゃんと彼の言葉を聞きたかった。
少し前みたいに恥ずかしいからって逃げたりしたくなかった。
「遥奏には、アオハルが必要だってこと。アイツさ、アオハルと話してると自然体で居られるって前に言ってた。だから…アイツのこと、頼むわ」
「一方的に責任押し付けないで。宙太くんも遥奏くんのこと、今まで通りに優しく見守ってあげて。2人の絆は永遠だから」
「何カッコつけてんだよ。ホント、アオハルって見た目とのギャップ激しいのな」
お互いに言いたいことを言い合って私達は別れた。
宙太くんはこれから夏休みの大会に向けてバスケ部で練習がある。
遥奏くんが戻ってくるまで、エースを背負うのは宙太くんしかいない。
責任を持って彼は戦うんだ。
「ガンバレ」
遠ざかる彼の背中に小さくそう呟いた。
―――――と、その時だった。
「…」
背後から誰かの声が聞こえた。
慌てて振り返るとそこには人っ子1人居なかった。
空耳だったのだろうか。
でも、忘れていただけで、前にもこんなことがあった気がする。
私を監視しているような視線を感じる時が確かにあった。
1年前から私はずっと誰かに見られている。
いや、見守られている?
一体誰に…?
私はまだ、砂や泥で汚れたスニーカーを履いている。
つま先をトントンと鳴らし、歩き出す。
桜並木は今は鮮やかな緑色。
新緑の季節がまたやって来た。
空には飛行機雲がひとつ出来て、少しずつ消えていく。
飛行機に負けじと鳥がその小さな翼を大きく忙しく動かして飛んでいた。
あの鳥はどこを目指して飛んでいるのだろう。
そして…
私は、
私は、どこを目指して歩いているのだろう?
今日はバイトがあるから、そこを目指すのだけれど、そこがゴールじゃない。
私のゴールはどこ?
私はいつまで歩き続ければ良いの?
出口の見えない暗いトンネルの中を私は長々と宛てもなく歩いている。
それは入学してからずっと変わらない事実。
誰かが助けてくれる、私に光を与えてくれる。
そんな受動的なことばかり考えて、私は自分で光ろうとはしていない。
私はいつまで光を探すのだろう?
いつまで、暖かいあの人の右手を探し求めるの?
私は不意に空気になった。
透明になって見えなくなった。
自分が分からなくなった。
私は1人で輝けない。
太陽は今年もアスファルトをジリジリと焦がしている。
「何それ?!聞いてないよ」
「遥奏が昨日オレのこと面会ルームに入れてくれたんだよ。家族がいねえのを見計らってこっそりな。アイツさ、自分から引き金引いておきながら、アオハルのこと野放しにしてっからさ、言ってやったんだよ!花火大会までに治せって。
そしたら、もちろんそのつもりだって言ってたぞ。…アオハル、お前の夏はこれからだ!」
やっぱり、
やっぱり、
あの夜は…
幻じゃない。
私は、意を決して静かに口を開いた。
「あのさ…、林間学校で何があったの?私…覚えて無いっていうか、夢とか幻のような気がして、実感が沸いてないの」
「アオハル、それマジ?マジで覚えて無い?」
私は首を力無く縦に揺らした。
宙太くんは「参ったなあ…」と言って頭をかきながら、キョロキョロ辺りを見回す。
「アオハル、申し訳無いが、俺の口からは言えない。遥奏に直接聞いてくれ。
ただ、俺が確かに言えることは…」
顔をあげた私の視線と宙太くんの視線がぶつかった。
私は、目を伏せることはしなかった。
ちゃんと彼の言葉を聞きたかった。
少し前みたいに恥ずかしいからって逃げたりしたくなかった。
「遥奏には、アオハルが必要だってこと。アイツさ、アオハルと話してると自然体で居られるって前に言ってた。だから…アイツのこと、頼むわ」
「一方的に責任押し付けないで。宙太くんも遥奏くんのこと、今まで通りに優しく見守ってあげて。2人の絆は永遠だから」
「何カッコつけてんだよ。ホント、アオハルって見た目とのギャップ激しいのな」
お互いに言いたいことを言い合って私達は別れた。
宙太くんはこれから夏休みの大会に向けてバスケ部で練習がある。
遥奏くんが戻ってくるまで、エースを背負うのは宙太くんしかいない。
責任を持って彼は戦うんだ。
「ガンバレ」
遠ざかる彼の背中に小さくそう呟いた。
―――――と、その時だった。
「…」
背後から誰かの声が聞こえた。
慌てて振り返るとそこには人っ子1人居なかった。
空耳だったのだろうか。
でも、忘れていただけで、前にもこんなことがあった気がする。
私を監視しているような視線を感じる時が確かにあった。
1年前から私はずっと誰かに見られている。
いや、見守られている?
一体誰に…?
私はまだ、砂や泥で汚れたスニーカーを履いている。
つま先をトントンと鳴らし、歩き出す。
桜並木は今は鮮やかな緑色。
新緑の季節がまたやって来た。
空には飛行機雲がひとつ出来て、少しずつ消えていく。
飛行機に負けじと鳥がその小さな翼を大きく忙しく動かして飛んでいた。
あの鳥はどこを目指して飛んでいるのだろう。
そして…
私は、
私は、どこを目指して歩いているのだろう?
今日はバイトがあるから、そこを目指すのだけれど、そこがゴールじゃない。
私のゴールはどこ?
私はいつまで歩き続ければ良いの?
出口の見えない暗いトンネルの中を私は長々と宛てもなく歩いている。
それは入学してからずっと変わらない事実。
誰かが助けてくれる、私に光を与えてくれる。
そんな受動的なことばかり考えて、私は自分で光ろうとはしていない。
私はいつまで光を探すのだろう?
いつまで、暖かいあの人の右手を探し求めるの?
私は不意に空気になった。
透明になって見えなくなった。
自分が分からなくなった。
私は1人で輝けない。
太陽は今年もアスファルトをジリジリと焦がしている。