HARUKA~恋~
「晴香ちゃん、最近はなんか楽しそうじゃなあ…。1年前は疲労感を感じておったが、最近は本当にキラキラしておる。
…さては“恋"じゃな」
ドキッとして、心臓が0,5秒止まった。
マスターは意外と鋭い。
私の変化にいち早く気づき、絶妙なタイミングで言ってくる。
これが人生を永く生きている人のカンなのだろう。
私は視線を右に左に、卓球のラリーを見るかのようにせわしく動かした。
「図星か…。わしのカンは良く当たるんじゃ」
見抜かれてしまったなら仕方ない。
自分1人で胸が張り裂けそうな思いを抱えているのが窮屈だったから、 有り難迷惑かもしれないけど、 マスターにも分けてあげた。
マスターはこの手の話が結構好きらしく、ボケ予防に良いと言って、いつも身を乗り出すようにして聞いている。
今日もまた、口元を緩めながら私の話を聞いて、若者のエネルギーを吸収したみたいだ。
そして、元気100倍になったマスターは意気揚々とこう言った。
「晴香ちゃん、花火大会、しっかりお洒落して行くんじゃぞ。男は浴衣に弱いからのお」
「でも…」
私は床を見つめた。
唇を噛む。
久しぶりの、懐かしい痛みだった。
「浴衣が無いなら、わしの娘のを貸してやるぞ」
「いや、でも…」
「気にしなくて良いぞ。わしの孫が男で、
娘のお下がりを着られなかったからまだ綺麗なままで残っているはずじゃ。用意して置くから、いつでも取りに来なさい。取りに来ないと、履歴書の住所を頼りに家まで行ってしまうからな。気をつけるんじゃぞ」
「マスター、ありがとうございます」
私は深々と頭を下げ、マスターに最大限の感謝を伝えた。
マスターにはいつもいつも助けてもらってばかりだ。
いつか今までの分をまとめてお礼をしなきゃと思った。
「そう言えば、晴香ちゃん。夏の新作ケーキで、マンゴーかキウイかブドウを使おうと思ってるんじゃが、どれが良いかのぉ?」
「そうですね…。私だったら…」
マスター、本当にありがとうございます。
やっぱり、いつ来てもここは私の場所だって、心からそう思える。
私を信頼し、必要としてくれている。
そう実感できる時、私は生きている心地がするんだ。
そして私は素直になれる。
「私、柑橘系が好きなんです。だけど、この中だったら、マンゴーショートが食べたいですね。なんか、前人未踏の領域なので、面白いかなって思って…」
「よおし。それなら、早速作ってみるわい。試作品は次回のお楽しみじゃな」
「はい!」
豆を丁寧に引いているマスター。
柔らかな、包み込むような芳醇なコーヒーの香り。
温かな木のテーブルと椅子。
私の一番安らげる場所は、どう思考を巡らせてもここしか思いつかなかった。
…さては“恋"じゃな」
ドキッとして、心臓が0,5秒止まった。
マスターは意外と鋭い。
私の変化にいち早く気づき、絶妙なタイミングで言ってくる。
これが人生を永く生きている人のカンなのだろう。
私は視線を右に左に、卓球のラリーを見るかのようにせわしく動かした。
「図星か…。わしのカンは良く当たるんじゃ」
見抜かれてしまったなら仕方ない。
自分1人で胸が張り裂けそうな思いを抱えているのが窮屈だったから、 有り難迷惑かもしれないけど、 マスターにも分けてあげた。
マスターはこの手の話が結構好きらしく、ボケ予防に良いと言って、いつも身を乗り出すようにして聞いている。
今日もまた、口元を緩めながら私の話を聞いて、若者のエネルギーを吸収したみたいだ。
そして、元気100倍になったマスターは意気揚々とこう言った。
「晴香ちゃん、花火大会、しっかりお洒落して行くんじゃぞ。男は浴衣に弱いからのお」
「でも…」
私は床を見つめた。
唇を噛む。
久しぶりの、懐かしい痛みだった。
「浴衣が無いなら、わしの娘のを貸してやるぞ」
「いや、でも…」
「気にしなくて良いぞ。わしの孫が男で、
娘のお下がりを着られなかったからまだ綺麗なままで残っているはずじゃ。用意して置くから、いつでも取りに来なさい。取りに来ないと、履歴書の住所を頼りに家まで行ってしまうからな。気をつけるんじゃぞ」
「マスター、ありがとうございます」
私は深々と頭を下げ、マスターに最大限の感謝を伝えた。
マスターにはいつもいつも助けてもらってばかりだ。
いつか今までの分をまとめてお礼をしなきゃと思った。
「そう言えば、晴香ちゃん。夏の新作ケーキで、マンゴーかキウイかブドウを使おうと思ってるんじゃが、どれが良いかのぉ?」
「そうですね…。私だったら…」
マスター、本当にありがとうございます。
やっぱり、いつ来てもここは私の場所だって、心からそう思える。
私を信頼し、必要としてくれている。
そう実感できる時、私は生きている心地がするんだ。
そして私は素直になれる。
「私、柑橘系が好きなんです。だけど、この中だったら、マンゴーショートが食べたいですね。なんか、前人未踏の領域なので、面白いかなって思って…」
「よおし。それなら、早速作ってみるわい。試作品は次回のお楽しみじゃな」
「はい!」
豆を丁寧に引いているマスター。
柔らかな、包み込むような芳醇なコーヒーの香り。
温かな木のテーブルと椅子。
私の一番安らげる場所は、どう思考を巡らせてもここしか思いつかなかった。