HARUKA~恋~
彼女の名は宮部瑠衣。

彼女はクラスのアイドル。

部活は吹奏楽部に所属していて、トランペットを担当している。
しかもかなりの名手。
2年生にして芸大は間違いないと言われており、私も最初にその音色を聴いた時は鳥肌が立った。

明るくて可愛くてエネルギッシュな彼女は常に輪の中心。

トランペットを取っても彼女は目立つ。 
体は小さいけど、どこにいてもちゃんと見つけられると思う。



そんな彼女と空気のような存在感ナシの私が出会ったのは4月。
そこから何の交流も無いまま2ヶ月を過ごし、ここに来る10日前に初めて会話した。


それも突然の出来事だった。



「あたし、蒼井さんと同じ班が良い!…ね、良いよね?」


くりくりお目めの威力は尋常じゃない。こちらに“断る”という選択肢を忘れさせてしまう。


「うん、いい…」

「やったあ!ありがと、チョー嬉しい!」


私の言葉を遮って喜びを爆発させていた。


しかも彼女の弾丸はこれだけでは済まなかった。

彼女の口から思いがけない言葉が飛び出したんだ。


「蒼井さんって、遥奏くんのこと好きでしょ?」


“好きなの?"じゃなくて“好きでしょ?”と確信して強気で言えちゃうのが彼女の素晴らしいところ。


だけど、私はそんな彼女が苦手だったりする。


返答に困って黙り込んだ私に彼女は更にたたみかける。


「同じ名前に同じ委員会。後ろの席だし、彼は今弱っている…。私が側にいてあげなきゃ…って感じ?」


図星だった。



どこまでこの人は私を知っているんだろう…



私は、幸か不幸かは置いといて、この類の人間を知っているもんだから、警戒態勢に入った。


「まあとにかく、楽しみにしてるね!もちろん、遥奏くんも同じ班に入れようね~!キャッハー、楽しみ楽しみぃ」


彼女はいつでも台風の目。
そして嵐だ。



私は彼女に一目置いている。
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