HARUKA~恋~
久しぶりにオシャレをしたいと本気で思った。

ショッピングモールに来るのは一体いつぶりだろう。

バイト代が出てもその大半が生活費に消え、毎月1万円は貯金していたから、洋服を買える余裕がなかった。
ただし、今回は 5000円以内で買えるものを買う 特例措置を取った。


自宅から一駅行った所に新しく出来たショッピングモールには、ありとあらゆる最新グッズが並べられていた。

見ているだけで楽しいけど、このままではウィンドウショッピングになってしまうと思い、気を引き締め直して、入念に洋服を探した。


似ているデザインのものが多やい上に、トレンドアイテムを知らない私は何を手にとってみれば良いのかすら分からず、店員さんに話し掛けられるまでただただボーッと直立しているしかなかった。


「何をお探しですか」

「えっと、その…いろいろです」

「こちらのスカートは人気ですよ。何にでも合わせられるのでオススメです」


店員さんに勧められるがままに手渡されたスカートを履いてみる。

鏡に映る自分の姿を凝視する。


スカート、履けるんだ…


いつもGパンに白や黒のニット、ユニシロのモフモフ素材のパーカーを着て寒さをしのいでいる私には有り得ないチョイスだったから、顎が外れそうなくらいに驚いた。

カーテンを開けるとすかさず店員さんが飛んで来て、「すごくお似合いです!」と言って手をたたいてくれた。

お世辞かもしれないが、言葉を真に受け
上機嫌になった私は、人生初のエンジ色の膝丈スカートを購入した。


「ありがとうございましたぁ」


店員さんに見送られ、帰ろうとしてふと思い出した。


遥奏へのクリスマスプレゼントを買っていなかった。

慌てて財布を取り出し、野口英世さんを数えようとしたが、1人もいなかった。

最後の望みを託して小銭を漁るが、100円玉1枚、10円玉3枚に1円玉が9枚しか残っていなかった。


私はうなだれた。




遥奏と初めて2人で過ごすクリスマスにまさかのプレゼント無し…

トホホ…



遥奏には2月まで待っててもらうしかない。
ごめんね。



心の中で最大級の謝罪をした。






帰り道。

すれ違うカップルはみんな楽しそうだった。
時に目を合わせ、微笑んでいる。


私もクリスマスはこんな風になるのかな…


49パーセントの期待と51パーセントの不安が複雑に入り混じる。







クリスマスまであと2日。

私はカレシへのプレゼントより、自分の勝負服を選んでしまったのだった。
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