HARUKA~恋~
BBQが盛り上がってきた頃。
ようやく私は仕事を終え、食事にありつけることになった。
空いている木の椅子にそっと腰を降ろすと溜め息がひとつ出た。
ふと空を見上げる。
今日の空は青くて雲一つない。
鳥が2羽仲良く大空を悠々自適に泳いでいた。
「よし、頂くか…」
割り箸を手に取り思いっきり力を入れて割ろうとするものの、箸はびくともしない。
割り箸も割れなくなってしまったのかと我ながら情けない思いで必死に格闘していると、どこからか声が聞こえてきた。
「蒼井さん、貸して」
私は驚き、慌てふためいていると彼がひょいっと私の手から割り箸を奪い、パキッと快い音を立てて割って見せた。
入念に見て見るとキレイに真っ二つに割れていて、これが心の透明度を表すのかもしれないと思った。
「ありがと」
なんとか一言を絞り出し、動揺が彼にバレないように一気にキャベツを口に駆け込む。
「う゛ふっ」
「蒼井さん、大丈夫?」
やはり一気食いはよろしくない。
私が反省していると、遥奏くんの大きな手が背中に乗り、優しくさすってくれた。
私は忽ち顔が紅潮し、完全に彼の顔を見られない状態になる。
彼の体温がジワジワと伝わって来て全身に広がり、凍った心が自然と溶け出し、水になって体中に巡る。
しばらくして落ち着きを取り戻し、ようやく私は安らかなお食事タイムに突入する。
「焼き加減どう?オレ普段料理しないから、もしかしたらマズい?」
「ぜーんぜん、大丈夫だよ。心配しないで。スッゴく美味しい」
「ホント?」
またもや私は首を激しく上下させる。
そのリアクションが彼のツボにドハマリしたらしく、普段は静かに笑うのに、口を大きくあけて高笑いしていた。
かわいい…
こういうのをギャップ萌えというのだろうか。
私はもう呼吸が止まってしまいそうだった。
1つ1つの動作が心をがっしり掴んで、揺さぶって、どうにもコントロールの仕様がない。
「蒼井さん、マシュマロ好き?」
「あっ、うん。大好き。小さい頃よく食べてた」
「なら良かった。それ食べ終わったらあっちでマシュマロ焼いて食べよう。みんなやってて旨そうだったし」
マシュマロか…
遥奏くんがマシュマロなんて使うとますます可愛く見えてきてしまう。
彼は私を殺すために生きているのだろうか。
心臓が機能停止になる頻度が多くなって来ている。
そろそろノックアウトしちゃう。
男の子が近くにいてこんなにも自分が狂ってしまうのは産まれて初めてだった。
そういえば幼い頃に一緒にマシュマロを食べたあの男の子にはドキドキしなかったなぁ…
やっぱり、遥奏くんは特別。
正直去年とはまた違う感覚に戸惑っている。
去年は胸の高鳴りって感じで、頼りたいって思ってたんだけど、今年は日々とろけてしまいそうで、守ってあげなきゃっていう感じ。
タイプが真逆の恋に、私の心は追いつけていない。
知らない内に好きになっていて、知らない内に目で追ってしまっているんだ。
無意識とは恐ろしいものだ。
「蒼井さん?」
ハッと我に返ると私は割り箸で肉を挟んだまま口をポカンと空けて制止していた。
「ごめん。今食べちゃうね」
そう言って最後にとっておいた肉にかぶりついた。
肉の旨味が口いっぱいに広がり、幸せな気分になる。
こんなに美味しい食事は久しぶり。
いつも1人、例の場所で食べているから。
好きな人が隣りにいるだけでこんなに味が変わるものなのか。
なんだか不思議だな…
「蒼井さんってすんごく美味しそうに食べるよね。オレ、そう言う人、好きだよ」
―――――ん?
好き?
私のこと…?
いや、まさか。
そんなわけ、
―――――無い。
「食べ終わったし、あっち行こ。ああ、早くマシュマロ食べたいな…」
心の動揺は気づかれずに済んだだろうか。
自己処理が苦手な私には今の言葉が適切か判断できない。
ちらりと横を歩く遥奏くんを見上げる。
表情は微妙。
あまりジロジロ見ていると余計怪しまれるから私はそっと視線を戻した。
すると、視界に両手をブンブン振ってこちらを見つめる宙太くんが入った。
「お前ら早く来いよ~!俺を1人にすんなよ~」
「いやいや、1人じゃないし!あたしたちじゃ不満な訳!?」
なにやら言い争っているようだが、内心楽しんでるんだろうな。
喧嘩するほど仲が良いとはよく言ったもんだ。
私と遥奏くんはその様子を見てニヤニヤ笑いながら、彼らの元へ1秒でも速くたどり着けるように全力で走って行った。
ようやく私は仕事を終え、食事にありつけることになった。
空いている木の椅子にそっと腰を降ろすと溜め息がひとつ出た。
ふと空を見上げる。
今日の空は青くて雲一つない。
鳥が2羽仲良く大空を悠々自適に泳いでいた。
「よし、頂くか…」
割り箸を手に取り思いっきり力を入れて割ろうとするものの、箸はびくともしない。
割り箸も割れなくなってしまったのかと我ながら情けない思いで必死に格闘していると、どこからか声が聞こえてきた。
「蒼井さん、貸して」
私は驚き、慌てふためいていると彼がひょいっと私の手から割り箸を奪い、パキッと快い音を立てて割って見せた。
入念に見て見るとキレイに真っ二つに割れていて、これが心の透明度を表すのかもしれないと思った。
「ありがと」
なんとか一言を絞り出し、動揺が彼にバレないように一気にキャベツを口に駆け込む。
「う゛ふっ」
「蒼井さん、大丈夫?」
やはり一気食いはよろしくない。
私が反省していると、遥奏くんの大きな手が背中に乗り、優しくさすってくれた。
私は忽ち顔が紅潮し、完全に彼の顔を見られない状態になる。
彼の体温がジワジワと伝わって来て全身に広がり、凍った心が自然と溶け出し、水になって体中に巡る。
しばらくして落ち着きを取り戻し、ようやく私は安らかなお食事タイムに突入する。
「焼き加減どう?オレ普段料理しないから、もしかしたらマズい?」
「ぜーんぜん、大丈夫だよ。心配しないで。スッゴく美味しい」
「ホント?」
またもや私は首を激しく上下させる。
そのリアクションが彼のツボにドハマリしたらしく、普段は静かに笑うのに、口を大きくあけて高笑いしていた。
かわいい…
こういうのをギャップ萌えというのだろうか。
私はもう呼吸が止まってしまいそうだった。
1つ1つの動作が心をがっしり掴んで、揺さぶって、どうにもコントロールの仕様がない。
「蒼井さん、マシュマロ好き?」
「あっ、うん。大好き。小さい頃よく食べてた」
「なら良かった。それ食べ終わったらあっちでマシュマロ焼いて食べよう。みんなやってて旨そうだったし」
マシュマロか…
遥奏くんがマシュマロなんて使うとますます可愛く見えてきてしまう。
彼は私を殺すために生きているのだろうか。
心臓が機能停止になる頻度が多くなって来ている。
そろそろノックアウトしちゃう。
男の子が近くにいてこんなにも自分が狂ってしまうのは産まれて初めてだった。
そういえば幼い頃に一緒にマシュマロを食べたあの男の子にはドキドキしなかったなぁ…
やっぱり、遥奏くんは特別。
正直去年とはまた違う感覚に戸惑っている。
去年は胸の高鳴りって感じで、頼りたいって思ってたんだけど、今年は日々とろけてしまいそうで、守ってあげなきゃっていう感じ。
タイプが真逆の恋に、私の心は追いつけていない。
知らない内に好きになっていて、知らない内に目で追ってしまっているんだ。
無意識とは恐ろしいものだ。
「蒼井さん?」
ハッと我に返ると私は割り箸で肉を挟んだまま口をポカンと空けて制止していた。
「ごめん。今食べちゃうね」
そう言って最後にとっておいた肉にかぶりついた。
肉の旨味が口いっぱいに広がり、幸せな気分になる。
こんなに美味しい食事は久しぶり。
いつも1人、例の場所で食べているから。
好きな人が隣りにいるだけでこんなに味が変わるものなのか。
なんだか不思議だな…
「蒼井さんってすんごく美味しそうに食べるよね。オレ、そう言う人、好きだよ」
―――――ん?
好き?
私のこと…?
いや、まさか。
そんなわけ、
―――――無い。
「食べ終わったし、あっち行こ。ああ、早くマシュマロ食べたいな…」
心の動揺は気づかれずに済んだだろうか。
自己処理が苦手な私には今の言葉が適切か判断できない。
ちらりと横を歩く遥奏くんを見上げる。
表情は微妙。
あまりジロジロ見ていると余計怪しまれるから私はそっと視線を戻した。
すると、視界に両手をブンブン振ってこちらを見つめる宙太くんが入った。
「お前ら早く来いよ~!俺を1人にすんなよ~」
「いやいや、1人じゃないし!あたしたちじゃ不満な訳!?」
なにやら言い争っているようだが、内心楽しんでるんだろうな。
喧嘩するほど仲が良いとはよく言ったもんだ。
私と遥奏くんはその様子を見てニヤニヤ笑いながら、彼らの元へ1秒でも速くたどり着けるように全力で走って行った。