HARUKA~恋~
マシュマロをたらふく食べて大満足した後、私たちは班ごとにハイキングをした。
ハイキングと言ってもただ山歩きするだけじゃなく、先生たちが作った問題を解きながら、チェックポイントを回っていくというものだ。
問題を見るや否や、「わかんねえよ、んなもん」と宙太くんは回答放棄。
女子たちは皆ナゾナゾが苦手でこちらも戦力外。
しかし、幸運にも私たちの班には荻原くんと言うクラス1の秀才が居たため、割とスムーズに進められた。
ただ、秀才にも解けない問題があった。
それは最終問題。
ナゾナゾというより、何かの本から引用してきたのではないかと思われるフレーズが真っ白の紙の中央に印字されていた。
( )で見なくちゃ良く見えない。
( )は目には見えないんだ。
私は最初にそれを見た時、本を読んでいない人に分かるはずない、ある先生のお気に入りの1冊から引っ張ってきたのだから正解する班は無いだろう、そう思っていた。
そして私はその答えを知っていた。
但し、遠い昔。
今の私の記憶からはすっかり抜け落ちて、答えはなくしてしまった。
覚えてはいる。
なんとなく、微かに覚えている。
でも思い出せない。
というより…
思い出したくない。
「心で見なくちゃ良く見えない。本当に大切なものは目には見えないんだ」
唐突に遥奏くんはそう言った。
私の記憶の欠片が寄り集まって答えが導かれた。
これは、確か…
「星の王子様のフレーズだよ」
―――――私の記憶と一致した。
ちゃんと覚えていたんだ、私。
忘れちゃいけないってあの子に言われていたフレーズを私は覚えていた。
良かったと胸をなで下ろした。
「星の王子様ってあの有名な?」
「そう。オレ、小さい時、よく母親に言われてたんだ、この言葉は肝に銘じとけって」
「大切なものは目に見えないって、一体何のことだよ?俺にはさっぱりわかんねえわ」
宙太くんのコメントにみんなは笑っていた。
でも、私は笑えなかった。
別のことを考えていた。
過去に置いてきた、自ら捨ててきた、
こと、もの、人…
本当に全部わすれようとして良かったのか。
私があの日したことは正しかったのか。
―――――答えはない。
だけど、今の私は過去を欲しがっている。
何かが私を動かしたんだ。
受け入れられなかったものを抱きしめたいと思うようになって来たんだ。
あれから、もう…―――――
「アオハル、行くぞ!」
「あっ、分かった」
私は歩き出した彼らにおいて行かれないように早足で追いつく。
自然と最後尾を歩いていた遥奏くんと並んで歩く形になる。
「蒼井さん知ってた?さっきの答え」
「うん。星の王子様、誕生日プレゼントに翻訳本もらって読んでたから。でも、ちょっと忘れてた。ちゃんと覚えてるんだもん、遥奏くん凄いよ」
「オレ、あの言葉好きなんだ。本当に大切なものは目に見えない。だったら何なんだろうってずっと考えてる。
…長年の疑問なんだ」
心で見なくちゃ良く見えない。
本当に大切なものは目には見えないんだ。
私は目で見ても心で見ても、大切なものは分かるよ。
それはね…
星になりたいと言って空に帰って行った、私がずっと大切に思って忘れないあの人と…
キミだよ。
遥奏。
キミの名前を叫びたい。
キミが居ることは私が居ること。
なんかそう思ってしまうんだ。
ごめん、許してね。
午後2時14分53秒。
運命の糸は目には見えない。
ハイキングと言ってもただ山歩きするだけじゃなく、先生たちが作った問題を解きながら、チェックポイントを回っていくというものだ。
問題を見るや否や、「わかんねえよ、んなもん」と宙太くんは回答放棄。
女子たちは皆ナゾナゾが苦手でこちらも戦力外。
しかし、幸運にも私たちの班には荻原くんと言うクラス1の秀才が居たため、割とスムーズに進められた。
ただ、秀才にも解けない問題があった。
それは最終問題。
ナゾナゾというより、何かの本から引用してきたのではないかと思われるフレーズが真っ白の紙の中央に印字されていた。
( )で見なくちゃ良く見えない。
( )は目には見えないんだ。
私は最初にそれを見た時、本を読んでいない人に分かるはずない、ある先生のお気に入りの1冊から引っ張ってきたのだから正解する班は無いだろう、そう思っていた。
そして私はその答えを知っていた。
但し、遠い昔。
今の私の記憶からはすっかり抜け落ちて、答えはなくしてしまった。
覚えてはいる。
なんとなく、微かに覚えている。
でも思い出せない。
というより…
思い出したくない。
「心で見なくちゃ良く見えない。本当に大切なものは目には見えないんだ」
唐突に遥奏くんはそう言った。
私の記憶の欠片が寄り集まって答えが導かれた。
これは、確か…
「星の王子様のフレーズだよ」
―――――私の記憶と一致した。
ちゃんと覚えていたんだ、私。
忘れちゃいけないってあの子に言われていたフレーズを私は覚えていた。
良かったと胸をなで下ろした。
「星の王子様ってあの有名な?」
「そう。オレ、小さい時、よく母親に言われてたんだ、この言葉は肝に銘じとけって」
「大切なものは目に見えないって、一体何のことだよ?俺にはさっぱりわかんねえわ」
宙太くんのコメントにみんなは笑っていた。
でも、私は笑えなかった。
別のことを考えていた。
過去に置いてきた、自ら捨ててきた、
こと、もの、人…
本当に全部わすれようとして良かったのか。
私があの日したことは正しかったのか。
―――――答えはない。
だけど、今の私は過去を欲しがっている。
何かが私を動かしたんだ。
受け入れられなかったものを抱きしめたいと思うようになって来たんだ。
あれから、もう…―――――
「アオハル、行くぞ!」
「あっ、分かった」
私は歩き出した彼らにおいて行かれないように早足で追いつく。
自然と最後尾を歩いていた遥奏くんと並んで歩く形になる。
「蒼井さん知ってた?さっきの答え」
「うん。星の王子様、誕生日プレゼントに翻訳本もらって読んでたから。でも、ちょっと忘れてた。ちゃんと覚えてるんだもん、遥奏くん凄いよ」
「オレ、あの言葉好きなんだ。本当に大切なものは目に見えない。だったら何なんだろうってずっと考えてる。
…長年の疑問なんだ」
心で見なくちゃ良く見えない。
本当に大切なものは目には見えないんだ。
私は目で見ても心で見ても、大切なものは分かるよ。
それはね…
星になりたいと言って空に帰って行った、私がずっと大切に思って忘れないあの人と…
キミだよ。
遥奏。
キミの名前を叫びたい。
キミが居ることは私が居ること。
なんかそう思ってしまうんだ。
ごめん、許してね。
午後2時14分53秒。
運命の糸は目には見えない。