美称・臥龍 喬子の生き様
「あっ、落としたわよっ。ねぇっ、ねぇっあなたよっ」
背後から、だんだんと強くなった口調を感じ、
私かしら?…と、喬子は、徐に 振り返る。
すると、
自分のハンカチが落ちていて、知らぬ間に落としていた事に気づく。
そして、目の前には
ミンクのコートを纏った 色気のある見知らぬ熟女が、
にこやかに自分を見ていて、
“あ、…この人が おしえてくれたんだ…”
と気づき、
喬子は、笑顔の出ないままに、
「ありがとうございます…」
と、応えた。
「綺麗なハンカチね。
今どきの若い子でも、ちゃんと持ち歩いてる子もいるのねぇ」
「………」
“まぁ。綺麗なお顔立ちなのに、愛嬌の無い子だこと”
熟女は、麗しの苦笑を浮かべながら、
取りにくそうに屈む喬子に 異変を察知し、
横からそっと、取ってあげた。
「あっ、すみませんっ、有難うございますっ」
「あなた、足が悪いの?」
「あ…。。」
「あぁ…、ごめんなさいね。私もね、足が悪かった事があったから、つい お節介が出ちゃって」
「あ…いいえ…。
はい…。
でも、リハビリが順調なので、
もう… こうやって庇わなくても大丈夫なんです…けど、
まだ…、つい癖で…」
「あぁそう。もう大丈夫ってことは、
庇わなくても屈める?痛みは、無いの?」
「はい」
「あら、そう!あなた、お勤めは?」
「え?…」
「してらっしゃるの?」
「いいえ…、今は、してないですけど」
「良かった。
うちで働かない?」
「…え?」
「あなた、とても美人。
教養もありそう。うちのお店に来てほしいわ」
「あ、…あの、お店って…?」
「高級クラブ。
一応、名が知れたお店よ。
だから、
如何わしい勧誘ではないから、怖がらないでね。
それとも、
そういうお仕事は、お嫌い?」
「あっ…、いえ…。
ただ…」
「ん?」
「さっき…、私、
今は、…って言いましたけど、
高校を卒業して、進学を断念して…
お勤めは、まだしたことが無いんです」
「あらっそうなの?
余計に良いじゃないの!まっさらね!
卒業してから~…、
あなた、おいくつなの?」
「19です、もうすぐ二十歳になります」
「あらっ!まだ十代だったの?!
若いとは思ったけど、十代とは思わなかったわ。
あなた、
大人っぽいのねぇ。
気に入ったわ!
ぜひ、来てちょうだい!
私は滅多にしないのだけど、スカウトよ!」
「スカ…ウト」
新鮮だった。
箱入り娘だった喬子にとって、
縁遠い、全く関わらない世界だと思っていただけに、
なんだか、急に…
新しい世界へと連れていってくれる扉が開いたようで…
喬子は、
まだ名も知らぬ熟女を真っ直ぐに見つめ、
二つ返事をした。
背後から、だんだんと強くなった口調を感じ、
私かしら?…と、喬子は、徐に 振り返る。
すると、
自分のハンカチが落ちていて、知らぬ間に落としていた事に気づく。
そして、目の前には
ミンクのコートを纏った 色気のある見知らぬ熟女が、
にこやかに自分を見ていて、
“あ、…この人が おしえてくれたんだ…”
と気づき、
喬子は、笑顔の出ないままに、
「ありがとうございます…」
と、応えた。
「綺麗なハンカチね。
今どきの若い子でも、ちゃんと持ち歩いてる子もいるのねぇ」
「………」
“まぁ。綺麗なお顔立ちなのに、愛嬌の無い子だこと”
熟女は、麗しの苦笑を浮かべながら、
取りにくそうに屈む喬子に 異変を察知し、
横からそっと、取ってあげた。
「あっ、すみませんっ、有難うございますっ」
「あなた、足が悪いの?」
「あ…。。」
「あぁ…、ごめんなさいね。私もね、足が悪かった事があったから、つい お節介が出ちゃって」
「あ…いいえ…。
はい…。
でも、リハビリが順調なので、
もう… こうやって庇わなくても大丈夫なんです…けど、
まだ…、つい癖で…」
「あぁそう。もう大丈夫ってことは、
庇わなくても屈める?痛みは、無いの?」
「はい」
「あら、そう!あなた、お勤めは?」
「え?…」
「してらっしゃるの?」
「いいえ…、今は、してないですけど」
「良かった。
うちで働かない?」
「…え?」
「あなた、とても美人。
教養もありそう。うちのお店に来てほしいわ」
「あ、…あの、お店って…?」
「高級クラブ。
一応、名が知れたお店よ。
だから、
如何わしい勧誘ではないから、怖がらないでね。
それとも、
そういうお仕事は、お嫌い?」
「あっ…、いえ…。
ただ…」
「ん?」
「さっき…、私、
今は、…って言いましたけど、
高校を卒業して、進学を断念して…
お勤めは、まだしたことが無いんです」
「あらっそうなの?
余計に良いじゃないの!まっさらね!
卒業してから~…、
あなた、おいくつなの?」
「19です、もうすぐ二十歳になります」
「あらっ!まだ十代だったの?!
若いとは思ったけど、十代とは思わなかったわ。
あなた、
大人っぽいのねぇ。
気に入ったわ!
ぜひ、来てちょうだい!
私は滅多にしないのだけど、スカウトよ!」
「スカ…ウト」
新鮮だった。
箱入り娘だった喬子にとって、
縁遠い、全く関わらない世界だと思っていただけに、
なんだか、急に…
新しい世界へと連れていってくれる扉が開いたようで…
喬子は、
まだ名も知らぬ熟女を真っ直ぐに見つめ、
二つ返事をした。