先生、ここで待ってる
俺が初めて女の子と付き合ったのは中学一年のときで、同じクラスでブラスバンド部の明るくて可愛らしい感じの子だった。
俺は野球部だったが、たまに地区の試合などに数人で応援にもきていたらしい。女子が応援に来ている、と他の部員や先輩たちが言っていたような気もする。
高校になってもつるんでいる日野は中学の頃から一緒で仲が良かった。中学に上がって急に身長が一気に伸びたらしい日野はやはりその頃からモテていて、彼女のいるグループの中に日野が付き合っている子がいたから、俺たちのグループとはよく話もしていた。彼女はよく笑う子だった。
俺は男友だちとは普通に話すけど、率先してその場を盛り上げるタイプではなくていつもみんなの話を聞いてたまにツッコミを入れる程度だったけど。
一年の体育祭の帰り際、彼女が教室にいるから行ってやれと日野に言われて行ってみると、告白された。彼女のことは嫌いではなかったし、俺は初めて告白されて舞い上がっていたのもあって付き合うことになった。
彼女が一緒に帰りたいと言えば一緒に帰ったし、日野に誘われて日野と日野の彼女、俺と彼女で秋祭りに行ったりもした。次の日、日野は帰りに初めてキスをしたと嬉しそうに話していた。俺もその日初めて女の子と手をつないだ。小さくて柔らかい手にドキドキしたのは覚えている。
俺は日野や他の友達に比べて奥手だったのか、付き合って半年たってもまだ手しかつなげていなかったが、人並みに欲だってあったし、そういうことに興味もあったので、いつキスをしようかと日々考えていた。
学年が2年に上がり、彼女とはクラスが離れた。その頃、俺も身長が伸びだして3つ年上の姉の友達が家に来たとき、かっこいいね、と言われるようになった。いつも日野みたいなモテ男と一緒にいるからあまり自分をそんな風に思ったことはなかったが、女子は背の高い男はかっこいい理論みたいなものがあるのだろうか。
日野ほどではないが、たまに告白もされるようになった。彼女との付き合いは続いていたのでもちろん断っていたが、彼女が日に日に不安そうになっていくのに気づいても何もしなかった。というより、何をどうすればいいのかわからなかった。あのとき、あの小さい手を引き寄せて抱きしめて、キスをしていれば何か変わっていたのかもしれない。でも、中学生で、恋愛初心者の俺にはそのときそんなことは思いつかなかったのだから仕方ない。
2年の夏休み、登校日の日の帰り道、一緒に帰っていると、急に彼女に別れを告げられた。彼女いわく
「夏希君が本当に私のこと好きか分からない」
だそうだ。え、好きだよ、と言ってみたけれど、彼女は泣いていて、俺の言うことも信じられない様子で、もうどうすればいいのか分からなかった。彼女の家の近くまで送ったところで、わかった、これまでありがとう。と言って帰った。日野に話すと
「お前結構冷たいね。」
と言って笑われて、そのときは、そんなこと言っても別れたいって言ったのあっちじゃん、と拗ねたけど、今思えばもう少し粘ったり、もう一度ちゃんと好きだよ、と言ったらよかったのかとも思う。今の俺ならもう少しうまくやれる気がする。
次に付き合ったのは1つ学年が上の先輩でバスケ部の人だった。その頃日野が一つ上の先輩と付き合っていて、俺は前に付き合っていた彼女と別れてから、日野と一緒にその人たちと遊んだりしていたのがきっかけだ。・・・俺の彼女はなぜかいつも日野がらみだ。
先輩は明るくて話すことがとても好きな人で、率先して話をしない俺にもよく話かけてくれたりして、一緒にいて楽だった。そういうところが好きだったし、顔も好みだったから、自分から告白した。
先輩といる時間は楽しかったし、何でも思っていることを伝えてくれたので困ることが少なかった。例えば、手をつなぎたいとか、キスをしたいとか。抱きしめて欲しいときは自分から抱きついてきてくれたし、そういうところもかわいらしくて好きだった。
先輩が卒業して高校生になっても付き合いは続いていた。抱きしめてキスをすればその先に行きたいと思うのは男として当然で、先輩が家に遊びに来たとき、そういうこともした。初めてのときは失敗したらどうしようとか、あと、先輩も初めてで痛そうで、気持ちいかどうかもよくわからなかったけど。悔しいことに、必要なアレはとっくに初体験を済ませていた日野に誕生日プレゼントとしてもらっていたから助かったのだが。
1年ほど付き合って、先輩に好きな人ができたと言われて振られてしまった。俺はまた、粘ることもすがることもしなくて、別れは案外あっさりとしていた。ショックなのはもちろんショックだったが、好きな人がいると言われてしまえば、俺にはもうできることがないように思えた。
「あんたさ、もうちょっと粘るとか、せめて一回引き留めるとかすればよかったじゃん。女心がわかってないね~」
と姉には呆れた風に言われた。
結局二人付き合っても、女心を理解することはできなかったようだ。
「お前優しいけどね。なんかさぁ、情熱っていうの?愛が足りないんじゃない?」
と日野に言われたときは、さすがにイラッときて
「うっせーよ、このタラシが。」
と尻キックをくれてやった。
自分はこれまでの彼女といい加減な気持ちで付き合ってたわけじゃないし、ちゃんと好きだった。だとしたら、日野が言うように、情熱や愛が足りなかったのだろうか。・・・そもそも、情熱とか愛ってなんだよ。どうやったら身に付くんだ。
俺は野球部だったが、たまに地区の試合などに数人で応援にもきていたらしい。女子が応援に来ている、と他の部員や先輩たちが言っていたような気もする。
高校になってもつるんでいる日野は中学の頃から一緒で仲が良かった。中学に上がって急に身長が一気に伸びたらしい日野はやはりその頃からモテていて、彼女のいるグループの中に日野が付き合っている子がいたから、俺たちのグループとはよく話もしていた。彼女はよく笑う子だった。
俺は男友だちとは普通に話すけど、率先してその場を盛り上げるタイプではなくていつもみんなの話を聞いてたまにツッコミを入れる程度だったけど。
一年の体育祭の帰り際、彼女が教室にいるから行ってやれと日野に言われて行ってみると、告白された。彼女のことは嫌いではなかったし、俺は初めて告白されて舞い上がっていたのもあって付き合うことになった。
彼女が一緒に帰りたいと言えば一緒に帰ったし、日野に誘われて日野と日野の彼女、俺と彼女で秋祭りに行ったりもした。次の日、日野は帰りに初めてキスをしたと嬉しそうに話していた。俺もその日初めて女の子と手をつないだ。小さくて柔らかい手にドキドキしたのは覚えている。
俺は日野や他の友達に比べて奥手だったのか、付き合って半年たってもまだ手しかつなげていなかったが、人並みに欲だってあったし、そういうことに興味もあったので、いつキスをしようかと日々考えていた。
学年が2年に上がり、彼女とはクラスが離れた。その頃、俺も身長が伸びだして3つ年上の姉の友達が家に来たとき、かっこいいね、と言われるようになった。いつも日野みたいなモテ男と一緒にいるからあまり自分をそんな風に思ったことはなかったが、女子は背の高い男はかっこいい理論みたいなものがあるのだろうか。
日野ほどではないが、たまに告白もされるようになった。彼女との付き合いは続いていたのでもちろん断っていたが、彼女が日に日に不安そうになっていくのに気づいても何もしなかった。というより、何をどうすればいいのかわからなかった。あのとき、あの小さい手を引き寄せて抱きしめて、キスをしていれば何か変わっていたのかもしれない。でも、中学生で、恋愛初心者の俺にはそのときそんなことは思いつかなかったのだから仕方ない。
2年の夏休み、登校日の日の帰り道、一緒に帰っていると、急に彼女に別れを告げられた。彼女いわく
「夏希君が本当に私のこと好きか分からない」
だそうだ。え、好きだよ、と言ってみたけれど、彼女は泣いていて、俺の言うことも信じられない様子で、もうどうすればいいのか分からなかった。彼女の家の近くまで送ったところで、わかった、これまでありがとう。と言って帰った。日野に話すと
「お前結構冷たいね。」
と言って笑われて、そのときは、そんなこと言っても別れたいって言ったのあっちじゃん、と拗ねたけど、今思えばもう少し粘ったり、もう一度ちゃんと好きだよ、と言ったらよかったのかとも思う。今の俺ならもう少しうまくやれる気がする。
次に付き合ったのは1つ学年が上の先輩でバスケ部の人だった。その頃日野が一つ上の先輩と付き合っていて、俺は前に付き合っていた彼女と別れてから、日野と一緒にその人たちと遊んだりしていたのがきっかけだ。・・・俺の彼女はなぜかいつも日野がらみだ。
先輩は明るくて話すことがとても好きな人で、率先して話をしない俺にもよく話かけてくれたりして、一緒にいて楽だった。そういうところが好きだったし、顔も好みだったから、自分から告白した。
先輩といる時間は楽しかったし、何でも思っていることを伝えてくれたので困ることが少なかった。例えば、手をつなぎたいとか、キスをしたいとか。抱きしめて欲しいときは自分から抱きついてきてくれたし、そういうところもかわいらしくて好きだった。
先輩が卒業して高校生になっても付き合いは続いていた。抱きしめてキスをすればその先に行きたいと思うのは男として当然で、先輩が家に遊びに来たとき、そういうこともした。初めてのときは失敗したらどうしようとか、あと、先輩も初めてで痛そうで、気持ちいかどうかもよくわからなかったけど。悔しいことに、必要なアレはとっくに初体験を済ませていた日野に誕生日プレゼントとしてもらっていたから助かったのだが。
1年ほど付き合って、先輩に好きな人ができたと言われて振られてしまった。俺はまた、粘ることもすがることもしなくて、別れは案外あっさりとしていた。ショックなのはもちろんショックだったが、好きな人がいると言われてしまえば、俺にはもうできることがないように思えた。
「あんたさ、もうちょっと粘るとか、せめて一回引き留めるとかすればよかったじゃん。女心がわかってないね~」
と姉には呆れた風に言われた。
結局二人付き合っても、女心を理解することはできなかったようだ。
「お前優しいけどね。なんかさぁ、情熱っていうの?愛が足りないんじゃない?」
と日野に言われたときは、さすがにイラッときて
「うっせーよ、このタラシが。」
と尻キックをくれてやった。
自分はこれまでの彼女といい加減な気持ちで付き合ってたわけじゃないし、ちゃんと好きだった。だとしたら、日野が言うように、情熱や愛が足りなかったのだろうか。・・・そもそも、情熱とか愛ってなんだよ。どうやったら身に付くんだ。