幸せの構図
2度目の電話は丘の上の彼女から。すーちゃんのことをまゆみから聞いて動揺する私に不安定な私を見透かしたように安堵させるような電話。大きな風が吹き波打つ水面(みなも)が、その魔法によって一瞬のうちに鏡のように静かになるような、そんな電話だった。

心おきなく皆と騒げた。歌った。飲んだ。

今まで味わったであろう人生の喜びも悲しみも微塵も見せずにあの頃のまま、ホタル祭りに行った時のまま、無謀な秋田ツアーに行った時のままの奴らが目の前にいた。

後藤さんがマイペースの「東京」を歌った。

まゆみが森高千里の「私がおばさんになっても」を歌った。

松本君が自分の近所の歌、西上三重子の「池上線」を歌った。
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