幸せの構図
私は一瞬かぐや姫の「神田川」を歌いそうになったが、二つの意味で今はまだタブーだった。ひとつはこれ、カラオケで歌ってもかなり空気違いだし、もうひとつはすーちゃんの思い出の曲を今この場で歌うことは未練を感じるし皆も知ってることだったから。しかしさらに考えれば、神田川を平然と歌えるならば、逆になんのわだかまりもないという証明になるのかもしれない。

しかしやはりこの場では場違いだ。

後藤さんがとなりに来て言った。

「ひろしもフォークソングじゃなく演歌が似合う歳になったんだな」

「あの・・・俺だけじゃないし」

星野が横やりを入れてきた。

「秋田にもカラオケなんかあるのか?」

「ああ、最近ようやくできて毎日行列だ」

相変わらずの憎めない星野。お前だって新潟じゃないか。
< 464 / 596 >

この作品をシェア

pagetop