幸せの構図
「確かにあの頃は私もショックだったけどね。それ以上に彼が私のもとを去ったことが悲しかったわ。別に私を嫌いになった訳でもなかったみたいだし、乗り換えた訳でもなかったから。

それに・・・あの時の心情を私に置き換えて書いた詩、あれを読んで、もしも少しでも私にわだかまりがあったとしたら、それも解消されたわ。私の内面を言い当ててる彼の言葉がちょと悔しいけど、同時に彼も苦しんでたのがよくわかったから。嬉しいような切ないような」

「彼を待つことができたのなら、どうしてすーちゃん自ら彼にアクションを示さなかったんですか?」

「そうよね。私はただ待ってただけだものね。傷つくのが怖かったのかな。でもそれ以上にどこか確信みたいなものがあったのかも」

「いつか必ず彼が戻ってくると」

「そうね。彼が再び私の前に現れるのに5年以上もかかったけど・・・」

「平塚駅で」

「うん、驚いたわ。なんで平塚にいるって知ってるの?なんでこの時間にここにいるの?なんでこんなに沢山の人波から私を見分けたの?とにかく突然のことで動揺したけど、嬉しかったのなんのって」

「確かに、一人の女性に対して不確かな状況でそれだけのエネルギーを使うって尋常じゃないですよね」
< 515 / 596 >

この作品をシェア

pagetop