ガラスの心に気づいたなら 〜 1
ポン

ボールが飛んできた。

わたしは駆け寄ると、サッカーボールを拾い上げた。

「すいません!」

少年たちが慌てて駆けてくる。

きっと私はずっと大人に見えるのだろう。

よく中学生の時大学生と間違えられていた。

身長はそこまで高くない。

それなのになぜ大人びて見えるのかわからない。

長い黒髪のせいだろうか。

キリッとした二重の瞳のせいだろうか。

それとも…やはり、私のオーラだろうか。


私はよそよそとボールを受け取って去っていく少年たちの後ろ姿を見て、少しだけほほえましく思った。

私もあんな風に…命と言う思い荷を背負わずに自由に好きになれたら…私は驚いて頭をかきむしった。


私は今何を考えていた?


わたしは急いで背を向けて歩き出した。
あまり長くここにいると自分がおかしくなってしまう。
だから数分だけでいい。

それだけで充分だ。

わたしは踵を返すとバイトへ向かった。

ここのバイトは意外とハードで、給料もそこそこいい。
このバイトと他にコンビニなどで働くことで生活費を養っている。

保育園の迎えはいつも一番最後だ。

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