ガラスの心に気づいたなら 〜 1
俺たちは携帯の光をつけてお互い顔を見合わせると複雑な表情になった。

「何時間も通行人が気づかなかったのかな。」翔太は言った。

すぐに優也が唇に人差し指を当てたから、翔太は声を低めて続けた、「だっておかしいじゃん。女の人が…それも若い人が深夜の歩道橋にいるなんて。それも妹連れてさ。」

「いや、普通気づくよ。お前が見つけたときは倒れたばかりだったんだよ、きっと。あんな風に倒れてたら誰も見ぬふりはできないよ。」優也はかすれた声で言った。

俺もそうだと思った。

「夜の女ねえ…」翔太は小さくつぶやいた。





夜の、女…か。






確かに彼女は変わっている。

そういえばずっと前、初めて出くわした時も夜の道だった。

あの日から俺は彼女が気になり始めたんだ。

「でも、どうして連れてきたんだ?」翔太が聞いた。

「だって俺の…俺の…」

俺は言葉に詰まった。
俺の何だ?
俺の何だというのだろう。
勢い余って連れて帰ってしまったが、これって一種の誘拐…?
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