ガラスの心に気づいたなら 〜 1
「っ…なんなの、反応なくてキモいんだけど。」

「っ、おい!やめろよっ!」

康介の怒鳴り声と、

「お前なんかもともと体目当てだっったっつーの。」

と悪態つく翔太の声が混じった。

康介が女を引き離すのが、うっすらと空いた瞼の間から見えた。

馬鹿な女はいきなりそばにあったプラスチック皿を投げつけたが、わたしはひるまなかった。

充分顔をそらす時間はあったけど、わたしは動かなかった。

女もまさか当たると思わなかったのかバツが悪そうな顔をした。

ひたいにごつんと、鈍い音と共にぶち当たり、はれていくんだろーななんてのんきに思った。

幸いあーたんはお風呂にあの真面目くんに入れてもらってるらしいから、わたしのこんな姿を見られずに済んだ。ちゃっかり知らない人にあーたんを引き渡したわたしはおかしい。

翔太が泣き叫ぶ女を引きづりながら家を去ると、康介の気配が近づいてきた。

まだ目を開ける気はしなかった。



「っ…ごめん。」
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