Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
右手を私の腰に回したまま、左手では頬を包み、親指で涙のあとを撫でるように拭き取る。
そんな優しい行為をあの涼太がするものだから、どうすればいいのかわからず、目だけ逸らしたとき。
「このまま俺のこと意識して好きになれ」
そんなことを言われ……抵抗する間もなく、唇を塞がれた。
突然のキスに驚く。
ここは道の真ん中だし、誰が通ってもおかしくないし、もし見られたらまたバカップル扱いだ。
それに……相手は、涼太だ。
なのに……抵抗する気になれず、そんな自分に困惑しながらも拒絶することはできなかった。
角度を変え、何度か触れるだけのキスをした涼太が、ぺろっと舌先で私の唇をなめとる。
その感触に肩を震わせると「……開けて」と命令なんだかお願いなんだかわからないような声で言われ、観念する。
涼太の、そんな低く潜めた男っぽい声なんて初めて聞いた。
「ふ……ぁ……」
入り込んできた舌が咥内を撫で、奥に引っ込んでいたそれを見つける。
私より少し熱い舌が重なり、軽く吸われるとまた肩が跳ねた。
普段の涼太の言動からは考えられないくらいの優しいキスを、戸惑いながらも受け入れる。
抱き締める腕も、大きな手も、優しい指先も。
全部に大事だって言われているようで、収まったハズの涙がじわっと瞼の裏で浮かんでいた。
長いキスが終わり、はぁ……と息をつく。
そっと目を開けると、涼太がじっと見つめていたりするから一気に顔が熱を持った。
「……なぁ」
「な、なに?」
今頃、本当にキスしてしまったんだという恥ずかしさに襲われ、どこかに逃げ出したい気持ちになりながら聞く。
すると、涼太はそんな私をじっと見つめながら口を開く。
「今のキス嫌がらないとか、おまえもう俺のこと好きなんじゃねーの」
「そんなわけ……っ」
「じゃあおまえ、好きでもないヤツとあんなキスすんの?」