Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
宮地に気持ちがバレて、涼太に告白されたのが金曜日。
そのふたつの出来事は土日の間もずっと私の頭の中を独占しっぱなしだった。
本当なら、宮地に失恋したって落ち込んだまま過ごしていたと思うのに、そんな暇なんかなく……ただ、どうしようと困惑したまま二日を過ごすことになった。
内容が内容なだけに菜穂にも相談できずに迎えた月曜日。
二十五日は多くの企業の給料日なだけあり、営業も店頭も忙しく、気がつけばシャッターが閉まり、時計は十八時半を過ぎていた。
数え終わった税金を種類ごとにまとめてから、明日打つ入出金伝票と一緒に代理に提出する。
それからデスク周りを片づけ、佐藤さんや代理に挨拶をしてから更衣室に逃げ込むようにして入った。
今日は忙しかったおかげで、宮地と話す機会はなかった。
給湯室の片付けは今日は佐藤さんがしてくれたし、お昼も一緒にはならなかった。
営業とはフロアが違うから、今日はこのままこっそり帰れば、宮地と会うことはないハズだ。
金曜日、強引に別れちゃったし、あのままにしておくつもりはないとしても、今はまだ気まずい。
気持ちの整理だってついていないし、謝るにしてももう少し経ってからの方がいい。
そう考えながら、白地にグレイのストライプが入ったシャツとカーキ色のショートパンツに着替え、こそこそと支店を抜け出す。
外に繋がるドアを開けると、端っこに夕暮れ色を残した空が広がっていた。
重たい鉄製のドアをそーっと閉め、足早に支店から離れる。
大通りと裏道とで迷い……いつかの涼太の注意が頭をよぎったものの、一刻も早くここから離れたいという気持ちが勝る。
でも、裏道をダッシュで走り出そうとしたところで「唐沢知花さんですよね」と呼び止められギクッとした。
慌てたのは、宮地を警戒してだったけど……振り返ってみるとそこにいたのは女の子だった。