Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


考えてみれば、〝唐沢さん〟って言っていたなぁと落ち着いてから思う。
あまりに宮地を意識しすぎていたのかもしれない。

でも……なんだろう。この状況は。

振り返った先にいた女の子を見て、ざわっと胸の奥が嫌な感じになる。

いつか、涼太を追いかけていた子だけど……着ている服が、私とほとんど同じようなコーデだったから。

ストライプの入った白いシャツに、カーキ色のショートパンツ。黒のパンプス。腕には、私がプライベートでよく使う時計によく似た時計がついていた。

誕生日に菜穂と涼太がくれて以来、大事にしている腕時計にそっくりだ。

そういえば、いつか見かけたときもそうだったけど……これは偶然なんだろうか。

髪色も髪型も似ていて……ざわざわと胸の奥の不安が大きくなる。

可愛い顔立ちをした女の子は私をじっと見つめていた。

大通りから数歩入った、裏道。
すぐそこは大通りだし、第一相手は女の子だし、と気持ちを落ち着かせる。

これで、顔立ちも瓜二つならもうホラーだったけど、幸い……と言えばいいのか、相手の女の子はとても可愛いから、おかしな怪奇現象ではないみたいで、そこだけ安心する。

「なんで私の名前を知ってるんですか?」

さっきこの子は私の名前を呼んだ。
でも、私はこの子を見たのは涼太と一緒のところだけで、知り合いではないハズだ。

そう思い聞くと、女の子は一枚の紙を見せる。

見覚えのありすぎる紙に、だからフルネームの印鑑なんてやめればいいのに、と本部に怒りが湧いた。

「二ヶ月前にあなたにもらった領収書です。あなたの名前が知りたくて、わざわざこの支店まで両替に来たんです。唐沢さん、部屋の表札に名前出してないでしょ。だから」


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