Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
私は、ああ言われて嬉しかったんだと思う。だって、あんなに想っていた宮地に言われたんだから、嬉しかったに決まってる。
同期って関係を壊してしまうってわかりながらも、それでもどうしても気持ちを閉じ込めておくのが苦しくて、伝えたかったくらいに好きだったんだから。
そうだ。どうしょうもなく好きだったんだ。
――なのに。
なんで、あのときのことを思い出そうとすると涼太の顔が浮かんでしまうんだろう。
昨日もそうだった。
宮地に『つまり、俺も本気で唐沢が好きだってことだから』『覚えておけよな』そう言われて、我に返って一番にしたのは、涼太を見上げることだった。
どんな顔をしているのかが気になって。
あの、強気の瞳が傷ついてしまっていないかが気になって。
「でも、急にどうしたんだ? 俺の彼女との馴れ初め聞きたいとか。いつもどっちかっていうとうっとうしがってるのに」
キョトンとした顔で言われ、曖昧な笑みを浮かべる。
ワイドショーでは、最近発覚したモデル同士の熱愛の記事を扱っているところだった。
「あ、いえ。なんとなく……友達から悩みを相談されたので、ちょっと気になって」
〝友達の話〟なんて、さすがにわかりやすすぎる嘘だっただろうか……と思いながらコーヒーを飲んでいると、松田さんは「へー。友達の恋愛相談? どういう感じ?」と明るい声で聞く。
どうやら私の話だとはバレていないようで、ホッとしながら口を開く。
「えっと……その子は、ずっと好きな人がいたんですけど、友達っていう関係を崩したくなかったり恋愛の価値観が違ってたりで、告白はしてなかったんです。
そしたらある日、幼なじみっていうか、可愛い弟みたいに思ってた人から急に告白されたらしくて」
自分のことだけに、もごもごとしながら説明すると、松田さんは「へー! それで?」と楽しそうな顔をする。