Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


「それで……幼なじみがぐいぐいくるからどうしようって慌てているうちに、なんでだか片想いしてた人からも告白されて……」
「えっ……マジで? 両想いだったってこと?」

〝両想い〟って言葉はなんだかあてはまらない気がして、うなづかずに「えっと」と説明する。

「片想いしてた人は、前の松田さんと一緒で、恋愛に真剣になれない人だったんです。
なのに、本気で好きだとか言われたらしくて……でも、それをどこまで信じればいいのかもわからないって、一過性のものかもしれないしって友達が言ってたので、松田さんに彼女との馴れ初め聞いたんです」

マグカップをコトンとテーブルに置く。

松田さんは「はー……なるほどなー」と腕組みをして、椅子の背もたれに背中を預ける。
パイプ椅子がギシッと音を立てた。

「友達が好きだったヤツって、ようは軽い付き合いしかしないような感じだったんだろ? 女の子は遊ぶだけみたいな」

「みたいですね。同じ恋愛観を持ってるような軽い女の子を選んで遊んでたとかで……相手に好きだって言われちゃうと、気持ちの重さの違いが見えて一気に嫌になるって話でした。
なのに、そんな人に急に想いを返されて……友達は戸惑ってるみたいで」

「まぁ、そうだよなぁ。それまでのそいつの恋愛観を知ってたら、例え相手が本気で好きだって言ってたところですぐには信じられないだろうし」

身に覚えがあるのか、意味深な笑みを浮かべながらコーヒーを飲む松田さんを眺める。

松田さんも彼女に気持ちを信じてもらえるまで時間がかかったんだろうか……と考えながら、マグカップを両手でいじる。

もちろん、宮地の気持ちがどこまで本気かわからないとか、急には信じられないって部分もある。

でも……悩んでいるのは、それだけじゃない。



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