Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「でも、本当に好きだったから、例え相手がそこまで本気じゃなかったとしても、嬉しいと思うはずなんです。有頂天っていうか。
だって、ずっと想ってきた相手に好きだって言われたんだから」
「まぁ、そうかもなぁ」とあいづちを打つ松田さんに「なのに……」と目を伏せる。
「嬉しさよりも、幼なじみを不安にさせて傷つけてるんじゃないかって、そればっかりが頭に浮かんで、それが不思議で……あ、そうに、友達が言ってて」
慌てて付け足したことに松田さんは気付かなかったようで、「え、なんで?」と驚いた様子でテーブルに身を乗り出す。
「友達は、幼なじみのことは弟みたいに思ってただけだったんだろ?」
「そうなんですけど……でも、告白されて、ずっと想いを寄せてくれてたんだなって考えたら、いろいろ思うこともあるじゃないですか。今まできっと傷つけてたのにずっと好きでいてくれてたのか、とか」
私は、涼太に宮地のことをきちんと相談したことはない。
それでも、隠していたわけではないから菜穂伝いにだとか私の態度から、私が宮地を好きだってことはずっと知っていたんだろう。
その上で好きでいてくれたのかと思うと、その間、涼太はどんな気持ちだったんだろうと考えて苦しくなる。
飲み会のあと、いつも偶然一緒になったと私は思ってたけど、あれだってきっと涼太が私を心配して迎えにきてくれてたんだ。
悪態つきながらも、私の希望をいつだって通してくれていたし、いつだって偉そうな文句ばかり並べる声の裏には、優しさがあった。
それに気付いてしまったら……もうダメだった。
これ以上涼太を傷つけたりしたくなくて……気持ちの中が、ただ、それだけになってしまった。