Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


頬を上気させた女の子が好意を持っていることは、誰の目から見ても明らかだったけれど。

「どーも」

目を合わせることもなく冷たい対応をする涼太に、さすがに女の子たちもそれ以上の可能性は見出せなかったのか、そそくさと席を離れていく。

見るからに、誕生日を祝うのを口実にそこからの流れを期待した目をしていたけど、諦めたらしい。

「今日だけで百人近くに祝われた気がする」

はぁ、と嫌そうに呟きながら、ドカッと背もたれに寄りかかった涼太に笑う。

「そんなにたくさんの人に祝われることなんてこの先ないかもしれないし、よかったじゃない」
「別によくねーよ。……俺は、おまえにさえ祝ってもらえればそれでいい」

突然告げられた言葉にまたしても言葉を失っている私なんてお構いなしに、涼太が続ける。

「昔……俺がまだ中学ん時。誕生日に、同級生の女が家まで来てたの覚えてるか? 俺が嫌々対応してたら、そんな態度はよくないって、うちに遊びに来るとこだったおまえが割り込んできて」

チラッと視線を向けられ「ああ……うん。覚えてるよ」とうなづく。

十年近く前の話だ。
プレゼントを持った女の子が涼太を訪ねてきていたのを、たまたま見かけたことがあった。

涼太の家の前、女の子のうしろには、応援のためにきたのか数人の女子がいた。

顔を真っ赤にして『これ、向井くんに……!』とプレゼントを差し出した女の子に、涼太は顔を歪めて『だからいらねーって何度断ったらわかるんだよ』と冷たく言い放った。

きっと、学校でも一度は断ったんだろうっていうのは、涼太の言葉からわかったけれど……それにしたって、家まで訪ねてきた女の子相手にあんまりだと思い、割り入った。


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