Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「そん時、おまえ、震えてるくせに俺を庇ったんだよ。おまえだって怖いくせに、俺の前に立って守ろうとしてた。……俺が、年下で、まだ身体も小さかったから」
最後、落ち込んだような声になってしまった涼太に慌てて口を開く。
庇ったのは事実だ。涼太を守ろうって必死だった。でも、それは……。
「あれは、年下だから守ったわけじゃないよ。大事な人なら、年齢なんか関係なく守らなきゃってなるでしょ? だからそうしただけで……今もし同じことがあっても、私は涼太を庇おうとするよ」
本心だった。
年齢だとか身体の大きさだとか性別だとか、そんなの関係なく、大事な人なら守りたい。
それは当たり前のことだと言うと、涼太はわずかに呆れたような笑みを浮かべ私を見た。
「わかってる。おまえはそういうヤツだから……だから、せめておまえのことは俺が守ってやりたいと思ってきた。今まで、ずっと」
「あ……だから……?」
だから、痴漢された気がするって言っただけで、わざわざ迎えにきてくれてたの?
だから、駅からアパートまで、毎日のように送り届けてくれてたの……?
涼太の、知らなかった想いをまたひとつ知り、胸が苦しさに悲鳴を上げる。
じわりと外側から浸食していた涼太の想いが、ついには内側まで届き、広がり、身体中に巡っていくみたいだった。
受け止めきれない想いに、どうしていいのか戸惑う気持ちと、嬉しいと思う気持ちがぐちゃぐちゃになる。
「結局、守れたことなんか一度もねーけど」
目を伏せたまま自嘲するみたいに笑った涼太に、しばらく言葉に悩んでから、「なんで急に、そんなこと言うの……」と呟くように聞くと、涼太は私を見てふっと口の端を上げた。