Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


「別に。もう身体もでかくなったし、好きだとも言ったから、隠す必要もねーだろ。だから」
「だからって……」

今までそんな素振りちっとも見せなかったくせに、急にこんなガンガンこられたら戸惑ってしまって仕方ない。

今だって、こんなにドキドキしてしまって、涼太の顔もまともに見られないっていうのに……。

「それよりおまえ、俺の誕生日だっていうのに祝いの言葉もなしかよ」

話を戻され、「え、あ……」としどろもどろになりながらバッグに手を伸ばす。

甘さを含んだ言葉と、普通の言葉。
会話のふり幅が大きいせいで頭がついていかない中、今日の朝、バッグに入れた小さな箱を取り出した。

「たいしたものじゃないけど……仕事で使うし、いくつあっても邪魔にはならないかと思って」

おずおずと差しだすと、涼太は私がプレゼントを用意しているとは思わなかったのか、瞳に驚きを広げた。

そのあとで、私から箱を受け取り、視線をそこに留めたあとラッピングを解いていく。

グリーンのリボンをほどき濃いグレーの包装紙をとると、中から白い箱が現れる。
涼太がその箱を開けるのを眺めながら、一週間ほど前にプレゼントを選んでいたときを思い出す。

最初は、腕時計にしようかとも思った。私がもらったから、そのお返しにって。

でも、涼太がつけている時計は就職祝いにお父さんからもらったものだし、それにとても高級品だ。

そんな素敵な時計を持っているのに、私が別のものをプレゼントするのも……と思い、次に思い浮かんだのがネクタイピンだった。

ネクタイほど好みが分かれないだろうし、仕事では必要なものだから……という理由から。

あまり目立ってもよくないだろうと選んだのは、シルバーのシンプルなものだ。
一応、有名ブランドのものだけあって、デザインは洗練されていてオシャレだけど悪目立ちはしない……はずだ。



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