Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
涼太がネクタイピンに視線を留めたまま黙ってしまうから、もしかして気に入らなかっただろうか……と不安になりかけていたとき。
やっと涼太が口を開く。
「これ、おまえが選んだのか?」
「え、うん。だって私から涼太へのプレゼントだし。……あ、でも一応店員さんには相談したよ。二十代前半の男の人がつけても問題ないデザインかどうか。
ネクタイピン買うのなんて初めてだったし、わからなかったから」
説明を聞いた涼太が「……ふーん」となんとも感情のわかりにくい声を出すから、我慢できなくなって「もしかして、気に入らない……?」と不安になって聞く。
すると涼太は、「別に」と短く答え、箱を閉じた。
その顔は、険しい。
「え、ごめん……ダメだった?」
「別にって言ってんだろ」
「だって、そんなおっかない顔してるから……」
眉間に寄っているシワを指摘すると、涼太は「これは……っ」とバツが悪そうに顔を歪め、目を逸らす。
「おまえが、俺のことを思って選んだとか、そういうこと考えたら……普通、ニヤけるだろ。でも、ニヤついてる男とか馬鹿にしか見えないしみっともねーから、それで」
ぼそぼそと説明され、ああ、そういうことか……となんとなく理解する。
つまり、照れ隠しってことか。どうやら喜んではもらえたみたいだと気付き、ホッと胸を撫で下ろした。