Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
週明け、月曜日の午後はとても来店客が多くて、あっという間にシャッターが閉まる時間を迎えた。
お店が閉まってからも未処理のものが溜まっていて、すぐに締めの作業とはいかなかった。
まずは営業が顧客から預かってきた処理だとか、窓口で依頼を受けた諸届の精査だとか、手元に残ったものを黙々と終わらせ、それから締めの作業に移り……全部が終わった頃には、十九時を回っていた。
週末でも五十日でもなくても、こういう風に忙しい日はたまにくる。
〝お客様が話し合って押しかけてきてるとしか思えないよね〟と佐藤さんが言ってたけど、本当にそう思ってしまう。
スーパーなんかでよく見かける、さっきまではガラガラだったレジが五分後にはなぜか長蛇の列になっているアレ状態。
「これお土産です」
別に決まり事ってわけではないのだけど。
どこかに出掛けたら支店の行員に簡単なお菓子を買ってくるという風習がある。
そんな高いものでもないけれど、週末に出掛けた遊園地で買ってきたお菓子を行員ひとりひとりに配っていく。
営業フロアにはデスクを向い合せた島がふたつあり、それぞれ四人が座っているけれど、もういつでも終われるのか、なごやかな雰囲気が流れ雑談が飛んでいた。
正直、こっそり、席を外しているといいなぁなんて思っていた宮地の姿もそこにあった。
あれ以来、宮地は普通の態度で接してくれるし、表面的な気まずさはない。でも……いつまでもこのままでいるわけにはいかないっていう思いがあるから、なかなか〝今まで通り〟に接するのは難しい。
宮地が、今のこの中途半端な状態を、本心ではどう思っているかがわからないから余計に。