Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


『つまり、俺も本気で唐沢が好きだってことだから』
『覚えておけよな』

あの時、宮地は答えを私に求めなかったけれど……だからって、ただ伝えて終わりとも考えていないだろう。

「へー。遊園地行ってたんだ。暑かった?」
「暑かったですねー。人も多いから余計に」
「うちも夏休みに行く予定だけど、さらに暑いんだろうなぁ」

ひとりひとりと簡単な会話をしながら配っていくと、宮地が「俺にもちょうだい」と手を差し出してくるから、そこに個装されたクッキーを二枚置く。

「ここの遊園地、チケット代あがったとかってこの間ニュースで見た気がするけど、結局今っていくらだった?」

さっそく食べるのか、ビニールの包装を開けてクッキーを取り出した宮地に聞かれ、首を傾げる。

「どうだったかなぁ。今回は友達がくれたチケットで入ったから、私は払ってなくて」

そう説明していると、聞いていた松田さんが「え、なにそれ!」と声を上げる。

「そんな太っ腹な友達なんているの? チケット代、七千円とかすんのに」

「友達もお父さんにもらったって話でしたけど……お父さん、不動産屋の社長ですからね。社長令嬢ってやつです」

クッキーを二枚デスクに置くと、松田さんは「さんきゅー」と言ってから「社長令嬢かー」と腕を組む。

「いい響きだよなー」
「ついでに美女ですしね」
「うわー、本当にいるんだ。そういう子」

松田さんと話している間に、配り忘れがないかをグルッと確認する。
そして、「少し気が強いけど性格もいいですよ」と笑みを返してから、自分のデスクに戻ろうとしたとき。

「――それ。一緒に行ったのって、社長令嬢だけ?」

そんな疑問が追ってきて、思わず「え?」と声が漏れてしまった。



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