Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
それから、残りの新人研修を終えたあと、同じ支店に配属され働き出して……たぶん、数ヶ月が経った頃には、宮地への印象は変わっていた。
そんな軽い恋愛観なくせに、すごく世話焼きで周りを放っておけない性格の宮地に、最初はチグハグさを覚えて戸惑うばかりだった。
『唐沢、今日頭痛いだろ。朝から何度も眉間叩いてるしバレバレ』
頭痛を言い当てられ驚いた私に、宮地は『それ、頭痛いときのクセ?』と聞きながら、私のおでこに手の甲で触れ『俺の手冷たいから気持ちいいだろ』と微笑んだり。
『鶴野がうるさいからなぁ。ほら、最近同期会っていっても集まり悪いだろ。俺くらいは誘いにのってやんないと可哀想だし』
月末の忙しい時期だっていうのに『彼女にフラれた……』と連絡してきた鶴野の愚痴を聞きに行ってあげたり。
追いかけられるのが嫌いとか、追ってきたら逃げて消えるとか、そんなことを言っていたのに、実際に接する宮地は情に厚くて周りの世話を焼いてばかりで……そのギャップにやられたといえばそれまでだけど。
周りを放っておけない優しさとか、分け隔てなく向ける柔らかい笑顔とか、どんなに忙しくてもピリピリした雰囲気を外に出さないところとか。
そういう部分にどんどん惹かれていった。
鶴野がいつか言っていたとおり、宮地は〝人たらし〟なんだと思う。
男女関係なく、無意識にたらしこんでしまう……言い方を変えれば、愛嬌があって憎めない、惹かれずにはいられない人だ。
いつでも周りに人が集まるような、とても魅力的な人。