Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


ニカッと笑ったおじさんが、持っていた紙袋から何枚もの台紙のようなものを取り出す。

まるでお見合い写真だとかのアレみたいだなぁと眺めていると、おじさんは中身を確認したあと、三枚の台紙をテーブルに並べた。

白い三枚の台紙を横に並べたおじさんが、「中を見てみろ」と言うと、涼太は渋々そのうちの一枚を取り、開く。

見開きになっている台紙。
その中にあったのは、さっきこっそり予想した通り、お見合い写真で……驚いて言葉を失う。

台紙の中では、綺麗な女性がにっこりと微笑んでいた。
涼太はそれを見るなり乱暴に台紙をパタンと閉じると、テーブルに投げるようにして置く。

「なんだよ、これ」

怒りの籠った声に気付かないのか、どうでもいいのか……おじさんは腕組みをしてニコニコ答える。

「いやぁ、この間な、母さんと結婚二十五年のお祝いをしたんだけどな。その時に、今の涼太くらいのときには結婚の話も出てたよなぁって話になって……なのにおまえらときたら、今まで恋人のひとりも連れてきたことないだろう。心配にもなるってもんだろう」

……おじさんの言い分もわかるな、と思う。

私は、過去にふたりだけ彼氏がいた。
紹介とまではいかなくても、恋人の存在を匂わせるようなことはあっただろうし、両親もそれとなく気付いてはいたと思う。

でも、菜穂と涼太の場合は、そんな匂いすらなにもしないっていう感じだろうし……。
もう二十歳も越えたっていうのにそんな状態だと、心配にもなるかもしれない。



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