Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
――男女間の友情は、成り立つのだろうか。
テレビや雑誌で一度は目にしたことのある質問だけど、その答えは〝性格による〟とか結局あいまいな言葉でまとめられてばかり。
――でもまぁ、別にどうでもいいな。
そんな風に適当に考えてきた自分を、今、できることなら引っぱたいてやりたい。
もっと真面目に考えろと。
そんな他人事みたいにスルーしてきたから、今、こんな雁字搦めになってるんだと。
「あ。唐沢」
同期の飲み会。肩がたまにぶつかるくらいの近距離。隣に座った宮地が私を呼ぶ。
目線は私が箸をつけていたお皿に向けられていた。
小皿にのっているのは、肉じゃがだ。
気の利く同期がひとりひとりに取り分けてくれたもので、そこには、じゃがいもやお肉と一緒に、ふたつのにんじんが入っている。
「どうせにんじん残すだろ? 俺食べる」
いい大人になって好き嫌いもどうかとは思うけれど、どうもにんじんだけは苦手だ。
そんな私に助け船を出してくれた宮地は、笑って「ん」と短い声を出し口を開ける。
「はい」
ときめくなときめくな。
騒ぎ出そうとする心臓を、もう何百回と唱えている呪文で必死に抑えつけて平静を装う。
箸でつまんだにんじんを宮地の口にポイッと入れると、向かいの席に座っていた鶴野が呆れたような顔をした。
「おまえらって本当に仲いいよなー。そういうこと平気でするから、俺、最初付き合ってんのかと思ったもん。勘違いだって知ってからもしばらくは嘘ついてるんじゃないかって疑ってたし」
けらけらと笑った鶴野がジョッキに手を伸ばす。
ごくごくという音が聞こえてきそうな飲みっぷりを、今日も早いうちに潰れそうだなぁと思いながら眺める。
鶴野はお酒が弱い。なのに、飲み会の雰囲気に楽しくなっちゃってハイピッチで飲み、速攻で潰れるというのを毎回のように繰り返している。
同期会ではもう名物になっていて、飲み会が終わったあと、誰が鶴野の面倒を見るかでひと揉めするまでがセットだ。