Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


〝同期〟とか〝友達〟なんて関係がなくなったとしても、一瞬だけでいいから女として見て欲しいだなんて。

そのあと気まずくなったとしても、その一瞬を望んでしまうなんて……私のただのわがままなんだろうか。

ずっと長いこと私のなかでくすぶっていた想いは、そんなことを考えてしまうほど追いつめられていて、最近ツラい。

彼女がいない今なら……思い切って告白することも許されるだろうか。
吐き出して、楽になってもいいだろうか。

困らせるだけだと分かっていて、今まで築いてきた関係を壊すと分かっていて告白するなんて、やっぱり自分勝手だろうか。

……っていうか。
恋愛感情って、こんな猛獣みたいな感じだったっけ?

落ち着け落ち着けって呪文のように言い聞かせているのに、暴走を止めない気持ちは今にも口から言葉になり飛び出しそうで扱いに困る。


「南支店にきた新人がすごい美形らしいじゃん。聞いた?」

今日もいい感じに酔った鶴野が明るく聞く。その相手をするのは、前回同様、宮地と私だ。

本当なら男性メンバーで飲む予定だったらしいけど、みんな都合が悪くなって宮地と鶴野だけになってしまい……さすがに鶴野とふたりは寂しいという理由で、帰ろうとしたところを宮地に半ば強引に拉致されたって流れだ。

「おごるから。なっ」と甘えたような笑顔と声で言われてしまえば、惚れた弱味で断れない自分が情けない。

そこに、友情以外の感情がないって知っていながらも、掴まれた腕にドキドキしてしまう自分が、悔しい。



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