Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「向井弟って、唐沢のなかで何ジャンルに振り分けられんの?」
「……ジャンル?」
ドッドッとおかしな音を立てる胸を隠すように平然を装って聞き返すと「そう。ジャンル」と再度言われる。
「友達とか家族とか……恋人とか。それ以上とか」
「それ以上ってなに? 恋人以上ってあるの?」と口を挟んできた鶴野に、頬杖をついたままの宮地が「あるよ」とうなづく。
「だって、恋愛はそのうち終わるもんだから恋人ってそこまで大きな存在でもないし。だから、大事だからあえて恋人にはしない存在っていうか、そういうの」
「つまり……失いたくない存在ってこと?」
首を傾げると、宮地が「そういうこと」と頷くから首を捻りたくなる。
だって、失いたくない存在と恋人ってイコールじゃないんだろうか。
宮地の恋愛観のなかではイコールではないのかもしれないけど……と考えていると、鶴野がそのまま口にする。
「宮地は恋愛を軽視してるからそうかもしれないけど、普通、恋人が失いたくない存在なんだよ。つーか、そこわける意味がわからん。普通に恋人大事にすればいい話じゃん。
なんで恋人とはいつか終わるって決めつけんの?」
宮地は「うーん」と少し難しそうにうなってから、エビチリを自分の小皿によそる。
「そういっても、俺も気付いたらこんな恋愛観だったからなぁ……。なんか、とにかく傷つけ合うようなことになるのが嫌なんだよなぁ。大事なヤツとは穏やかな関係がいいっていうか」
そうぼやいた宮地が続ける。