Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「親が離婚してるからか、もともと結婚願望もないし。別に結婚しなくても、大事なヤツとは一緒にいられるし。今みたいに」
にっと口の端を上げた宮地に、鶴野は照れ半分、呆れ半分みたいな笑みを浮かべる。
それから「おまえは本当にタラシだよなぁ」と頬をぽりぽりとかいた。
「あ、タラシって女タラシもそうだけど、人タラシの方な。なんていうか、たしかに宮地は結婚とかしなくても周りに常に人が集まってそう」
鶴野がビールをぐいっと飲んで続ける。
「まぁ、安心しろよ。俺はずっとこうして宮地と仲良しでいてやるから。……しかしおまえ、結構ナイーブだったんだなぁ。傷つけたり傷つけられたりするのが怖いとか」
わざとなのか、それとも酔いが回ったせいなのか。
軽いトーンで言う鶴野に、宮地は困り顔で笑う。
今の鶴野の言葉に言いたいことがあるみたいだった。
「だって恋愛感情って結構凶暴じゃん。嫉妬とか特に。俺はそういうのあんまりないけど、間違っても大事な相手にそんな自分勝手な感情向けたくない。だから大事なヤツは恋人にはしない」
珍しく真面目に語っている横顔をじっと眺めていて……気付いたら言葉がもれていた。
「でも、好きなら、そういう凶暴な感情だって受け入れたいって思うんじゃない? やきもちだって、自分のことを想うあまりってことだし、度を超えたものじゃなければ嬉しいと思う。
どれだけ傷つけあったって仲直りすればすむことだよ。宮地の両親は仲直りできなかっただけで……気持ちが冷めていなければちゃんと仲直りできる」
わずかに驚いた表情を浮かべたあと、「そんなもんかねぇ」と軽い相づちを打つ宮地に続けた。