Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「それに、いくら宮地が大事だって想ってたって、相手に恋人とか家庭ができたらそっちを優先することが増えるかもしれないでしょ?
環境が変われば価値観だって変わるものだし……〝ただの友達〟をいつまでも優先していられなくなる可能性だってあると思う」
宮地をじっと見つめる。
いつもからかうような表情ばかり浮かべている宮地が、真面目な顔で私を見ていた。
「宮地は一緒にいたいからって恋人にはしないって言うけど、そうしたら結果的に一緒にいる時間は減っちゃうんじゃない? 私は、友達よりも恋人を優先しちゃうと思うし、それは別に珍しい考え方じゃないとも思うよ」
そこまで言ってから、黙って見つめてくる瞳に気付いてハッとする。
別に、今まで宮地とは本音で色々話してきたし、猫を被るつもりもないから問題ないけど……それにしても、随分偉そうに意見してしまった気がして気まずくなる。
ぶつかっていた視線もそれまでは気にならなかったのに、気付いた途端に恥ずかしくなり、慌てて目を逸らした。
そして、誤魔化すみたいにジンジャーエールに手を伸ばしながら言う。
「ごめん。言い過ぎたかも。あくまでも私はそうだってだけだから。もちろん、どうしようが宮地の自由だし、宮地の言うようにちゃんと向き合うからこそ傷つけ合うことだってあるし、それが嫌だっていうのもわかるし……ごめん。本当に気にしないで」
宮地が私を見つめているのを横顔で感じながら目を伏せ、コップを傾ける。
口の中にスッキリとした生姜の辛さが広がり、シュワシュワと気泡が鼓膜近くで弾けた。
でも、そんな炭酸の音よりも、動揺から速まった鼓動の方がうるさくて困ってしまう。
なんとなく、感情が抑えきれずに突っかかっちゃったけど、宮地の恋愛観なんて自由だ。私が口出すことじゃなかった。
しかも、両親のトラウマが関わっているなら余計に。