Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
〝恋愛感情〟という名前の猛獣は本当に厄介だ。こんなふうに暴走したいわけじゃないのに……自分自身でも止められなくなってしまう。
ケンカ腰とかキツイ口調で言ってしまったわけではないにしても……思いっ切り私情で発言してしまったせいか、バツの悪さがのしかかってくる。
こんなのはよくない。
宮地を勝手に好きになったのは私なのに、その感情が原因で宮地を責めるようなことはよくない。
胸に無理やり押し込めているからこんな態度をとってしまうのなら……だったら、もう伝えてしまおうか。
宮地が今見つめている、〝友達〟だと思っている女は、宮地が好きで好きでたまらないんだって。
だから、与えられる優しさにいちいち期待を募らせているんだって。
そしたら宮地はなんて答えるんだろう。
そんな風に考えてうつむいていると、それまでの空気を吹き飛ばすような明るいトーンで鶴野が言う。
「うん。唐沢の言いたいこともわかるわー。つーか、そっちのがわかる。宮地のは独特だもん」
軽い声色に、ようやく宮地の視線が離れホッとする。ずっと見られているのが落ち着かなかったから。
「えー、俺、少数派かー」
私が勝手な恋愛観を語っている間、なんとなく宮地の雰囲気が変わった気がしたんだけど……。
宮地の今の声はいつもの調子だった。
気のせいだったのかな。
変に意識しすぎたのかもしれない、と安心していると、鶴野が手に持った焼き鳥の串先で宮地を指す。
「そもそも宮地ってどういう子を彼女にすんの? よく言い寄られてるけど、誰も相手にしてないよな?」
そのまま焼き鳥を口に入れた鶴野に、宮地はチーズに手を伸ばしながら「んー」と答える。
「本気でも冗談でも、好きだとか言ってくる子はまず無理かな」
「え……」と誰にも聞こえないくらいの小さな声が静かに落ちる。
思わず目を見開き凝視してしまった先で、そんな私には気づかずに宮地が気付かずに続ける。