Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「俺が急に別れようって言ってもすんなり受け入れてくれるようなタイプとしか付き合わないな。そういうのって、ちょっと話せばわかるだろ?
だから、仲良くなってからだんだん……とかはまずない。直感でいいなと思わなかったらそのあともない」
宮地の言葉が、胸の底に重たく落ちる。
ズン……と落ちた言葉がどんどん重さを増し、そのまま底を突き破るんじゃないかと思うほど、重たく……痛かった。
さっきまであんなに暴走していた猛獣がスッと精気を抜かれたみたいに静かになる。
だって……『直感』なんて。それじゃあ、私はありえないってことだ――。
こんなに傍にいて、仲良くなってしまった私は、ダメだってことだ。
頭を後ろから殴られたみたいな衝撃が身体の内側を走り、呆然としてしまう。
目の前の光景はぐにゃりと歪み、頭の中では、宮地の言葉がただ繰り返されていた。
……わかっていた。宮地に女として見られていないことなんて。それでも……彼女と別れたからもしかしたら……なんて、どこかで期待してしまっていた自分に気付かされ、唇をかむ。
彼女がいたっていなくたって、私に可能性なんて最初からなかったんじゃない。
もしかしたら……なんて。うぬぼれもいいところだ。
「なるほどなぁ。まぁ、よく言えば、一目惚れかー」
鶴野が納得したような声を出すと、宮地はビールジョッキから口を離してから続ける。
その様子を、どこか遠い場所から見ているような気持ちで眺めていた。
「たぶん俺、恋人って一番軽視してるんだろうな。意識して軽くしか付き合わないし、そうすればケンカにもなんないから、それが自分に合ってるとも思ってきたけど……それじゃダメかもなぁって、さっき唐沢が言ったこと聞いて思った」
急に私の名前が出て、ビクッと肩が揺れる。
ショックを受けたままどこか奥深く迷い込んでしまっていた意識が呼び起され、ゆっくりと隣を見ると、ニッと口の端を上げた宮地と目が合った。