Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


「いやー、俺、甘いものはそこまで好きじゃないから、他からの感想」
「へー、そうなんですか」

先輩に向かってこう言うのも失礼だけど。
松田さんは〝ワンコ系〟というか、親しみやすくて可愛らしいイメージがある。

そのせいで、なんとなく甘いものも好きそうなイメージを持っていたから、意外に思っていると、松田さんが続ける。

「男で甘いのイケるヤツも最近増えてるとか聞くけどなー。あれって本当なんかな。彼女に付き合ってるだけな気もするけど。
宮地はイケるんだっけ? 甘いの」

話を振られた宮地が、「いや」とこちらも苦笑いで答える。

「俺もそこまでは。まぁ、ケーキひと切れくらいなら食べられますけど、自分で買ってまで食べようとは思わないですかね」

「だよなー。男はそんなもんだよな。スイーツ男子とか、コンビニの戦略なんじゃねーかな」
「まぁ、たしかに俺の周りにもそこまで甘いものが好きってヤツもいませんからね」

宮地を含め、同期のなかではたしかにスイーツ好きっていないかもしれないなぁと考えながら「じゃあ」と口を開く。

「たとえば、彼女がバレンタインに一生懸命作ったチョコケーキがホールだったら?」

ビタッと空気が止まった音が聞こえたようだった。

松田さんはぐぐっと何かに耐えるよう悶絶していて……一方の宮地は、迷惑と呆れ、半々の顔をしていた。

まぁ、宮地はそうだろう。だって、本気で付き合ったことなんてないんだから。

「宮地、彼女がホールケーキ出してきた途端に別れ話切り出しそう」

ぼそっと呟くと、松田さんが「え、なに、おまえそんなひどいの?」と驚いた顔をして聞く。

宮地は「いやー……」と少し考える様子を見せながらも答える。





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