Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「毎年いっぱいもらってくるし、それを迷惑そうにもしてるから今まではあげなかったけど、今度はあげようかな。学生の頃と違ってそこまでもらわないだろうし」
せっかく給湯室にいることだし……と、シンクにたまっているコーヒーカップやソーサーを洗うために、スポンジに洗剤をつける。
もこもことした泡を立ててから食器に手をかけた。
「でも、さっきの宮地と松田さんの会話聞いてたら、あまり気合い入れない方が相手のためになるのかもね」
乾いた笑みを落としながらカップを洗っていると、一拍空けたあと、宮地が「本命には?」と聞いてくる。
〝本命〟という言葉に一瞬ギクリと心臓が音を立てたけれど、笑顔を浮かべて誤魔化した。
私の本命が自分だとは思ってもいないんだろう。残酷な男だ。
「どうだろ。失恋決定だし……たぶん、あげない。甘いものもあまり好きじゃないみたいだし」
宮地が甘いものが得意じゃないことは知っていたから、去年も一昨年も特に用意はしてこなかった。
女性行員合同であげただけで。
……まぁ、たとえ突然の味覚変化があったりして宮地が甘いものを好きになったところで、宮地の中で私はありえないんだって知ってしまった以上、これからだって当然渡せない。
可能性がゼロだって知った上で告白する勇気なんて、残念ながら私にはない。
関係を壊してしまったとしても告白したい、なんて、わずかな可能性に期待していたから思えたことだ。
そう考えて、自分自身をバカだなと笑ってしまいそうになる。
うぬぼれもいいところだ。
「失恋って……でも、告白したわけじゃないんだろ? だったら……」
眉を寄せ、珍しく納得いかなそうにする宮地を「あー、もういいから。この話はおしまい」と強引に止める。
なにを言われても、これ以上続けたら泣いちゃいそうだったから、スポンジに洗剤をつけるフリをしてわざと顔を背けた。
私があまりに無理やり話題を終了させたせいか、宮地はしばらく黙っていたけれど……そのうちに、諦めたようなため息が聞こえた。