Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「なぁ」
「……ん?」
「おまえも慰めろ。支店違っても〝先輩〟だろ」
ムスッとした顔をされても、怖くは感じない。
やっぱりまだ本調子ってわけではないのかもしれない。
それなのに、私を心配してわざわざ仕事おわりに来てくれたのか。
握られたままの手に視線を落とし、大きな手だなと思った。
涼太なのに、知らない男の人の手みたいだ。
同じ温度がふたりの間で溶け合う。
「んー、じゃあアイスでも買ってあげようか。この時間ならまだ駅中にあるアイス屋さんもやってる時間だし……」
「子ども扱いすんな」
じろっとした眼差しでピシャリと言われ、笑ってしまう。
「じゃあ、なにがいい――」
〝じゃあ、なにがいいの?〟
クスクス笑いながらそう聞こうとしたとき。
握られたままの手をくいっと引かれ……そのまま唇がぶつかる。
ぶつかる、というより、触れた、という表現の方が正しいかもしれない。
目の前には形のいい瞳があって、私を見つめていた。
優しく触れている唇に柔らかく啄まれ、それでも動けないでいると、涼太がそっと離れる。
目の焦点が合い、しばらく目をパチパチとしてから、ようやくハッとした。
繋がれていないほうの右手で口を覆い……今さらバクバクと騒ぎ出した心臓に押し出されるように言う。
「え……今、なに……」
パニックになりながら震える声を出す私を、涼太はしれっとした顔で見上げていた。
端正な顔立ちが月明かりに照らされていて……漂う色気に、驚きとは違う理由で胸がドキッと跳ねた。