Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
***
「どうしたの? さっき」
私のアパートまでの道を歩きだしたところで、ようやく口を開いた。
宮地と別れてから今まで、ずっと無言だったから。
ここに来るまで涼太はなにか考えているのか、ずっと無表情で黙っていたし、私も……さっきの宮地のことを考えていた。
さっきは、たぶん誤解をしてしまっている宮地から涼太を庇わなきゃって思いが働いて気付かなかったけど、冷静になって、ようやくあの言葉はどういうつもりなんだって疑問が湧いた。
『こんなところでうちの唐沢に軽い気持ちで手出してもらっちゃ困るんだけど』
あんなの、涼太の言う通り同期の言葉じゃない。
威圧感のある笑顔で言うことじゃないし、あれじゃあ、嫉妬してるって私に勘違いさせても仕方ないような態度だ。
〝困る〟ってなんで?
私が涼太にキスされたからって、宮地はなにも困らないハズだ。
なのになんであんな言い方をして……期待させるの。
そんな考えで頭のなかがいっぱいだった。
カラッとした、夏の夜風がふわりと吹く。
未だ手を繋いだままの涼太は、前を向いたまま口を開いた。
「どうしたって、どれが?」
半歩前を歩く涼太の横顔を見上げながら答える。
「宮地への態度のこと」
涼太は、先輩相手に失礼な態度を取るようなヤツじゃない。
私への態度は悪いけど、身内以外へはしっかりしている。だから、宮地に敬語も使わないでケンカをうるなんて、考えられないことだ。
だから聞くと、少しの沈黙のあと「別に」とぼそりと言われた。